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2017-01-03 01:32

■月兄弟おはようの手紙TA

■月兄弟。おはようの手紙。TA。

竜の咆哮、衝撃。それからの記憶は殆ど無い。

あの少女に何かをされた。
何をされたか、それが分からない。分からないまま、もっと分からなくなる。力や魔力を吸い取られたその感覚に近い、ずっと酷い感触。取られた、奪われた、失われた、という実感を延々と繰り返しにして味わうようなそういうものに埋もれて溺れているというような苦痛まみれの喪失感。
その痛みすらも、次第に薄れていく。いいや、違う、と僕はふと気が付いた。こうして消えかけているのは、僕自身だ。
あの少女には僕というものが奪われたのだ。

僕は眠っている。どれだけ経っても目覚めの時は来ない、そんな眠りの中に居る。
僕は少女の連れた竜にやられて、身体だけこうして転がっていた。
眠っている。眠っている。怖い。何も見えない、真っ暗闇だ。何も無い、いや何かがあるかも知れない、何も無しに独りである事は本当に恐ろしくて、そこを探るように僕は手を伸ばす。
ああ、きっと、実際には手を伸ばしたのだと思っただけなのだろう、そうしても何も掴めない。手の中には何も無い。もう身体がろくに動かないのだ。

僕が消えていく。この真っ暗闇のように僕も形も何も無くなってしまうのだろうという、そういう感じがした。




――――セシル。


どきりと鼓動が跳ねたのが分かる。僕はまだどうにか生きているらしい、そして驚いたのだ。
どきどきしている。ああ、だって、声がしたのだ。暗くて顔も何も見えない、僕は酷く寝惚けているような有様で、近くなのかずっと遠くからなのかも分からない。けれど、分かった。

兄さんの声が、聴こえた。

渇いた所へ清水が流れ込んだような、そんな心地になる。もしくは暗闇に点された灯り。酷く冷えていたらしい身体に、その温かさが沁みた。それはそういう、優しくて綺麗なものだった。
兄の声、彼が僕の名前を呼ぶ。気遣いの言葉。思い、決意、誓い。それを語る低い声音。僕の為に紡がれるその音。
兄の優しさと願いと祈り。言葉という息吹。息絶えかけた僕を呼び起こした、唇の魔法――

暗い底で寝ていた僕を引っ張り上げてくれた兄のその手は、僕の手よりもずっと大きくて頼もしくて、温かかった。






『ソレデ償ッタツモリカ、世界ヲ脅カシタ罪ヲ、我ヲ捨テタ罪ヲ――』

抜き出された僕の心が暴れて兄に言う、それは僕の甘えだ。納得をしよう、もう意地なんか張らずに、僕は僕を取り戻す。
そうだ。僕はきっと、ずっと、甘えたかったのだ、兄という人に。
さよなら、なんかじゃ無い、そうでは無くて。ただいまとかお帰りとか、そういう事を言いたいじゃないか――






目覚めのキスか、お早うのキスか。兄さんが僕にくれたものは例えばつまりそういうものですよね、と僕は思うのだ。

月の民の力だ。同じ血を引く同士だから、どうにか声が届いたのだろう。そう短く片付けてしまう兄さんが何だか可笑しい。
眠る中で兄の声が聴こえた、ずっと呼び掛けていてくれた、だから僕は暗闇の中でも自分を失わずに居られた。助けて貰ったという感謝と、助けてくれたのだという感激。「兄さんが来てくれた」「もう会う事など無いと思っていた」、だから正直、僕ははしゃいでいる。
兄さんが語り掛けてくれたこと、全部覚えているのだ、しっかりと。でもまた同じようにとは言ってくれない兄さんは照れ屋に違いない。
寝惚けている僕に兄さんはずっとそうして話し掛けていてくれたんだって、こういう事を言ってくれたんだ話してくれたんだって、ああほら僕の自慢の兄だと見せびらかしたい。でも、僕はそんな浮かれた衝動を堪える。
だって、だ。自分宛のラブレターの中身を他の誰かに見せ付けるなんていう、そんな事は有り得ないだろう?




<終>

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  1. FF/DFF二次創作(腐)

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