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2017-01-03 01:34

■月兄弟TA

■月兄弟。公開終了WEBアンソロより。TA。

二人の間には、線が引かれている。


『竜の口より生まれしもの、天高く舞い上がり闇と光を掲げ、眠りの地に更なる約束をもたらさん』
『月は果てしなき光に包まれ、母なる大地に大いなる恵みと慈悲を与えん』
『されど、束の間の休息なり。その月は自らの光を求めて更なる旅に導かれん』
『同じ血を引く者、一人は月に、一人は母なる星に、時の流れがその者達を引き離さん』

遠ざかる背中。彼は独りきりで、歩いて行く。
輝石の床を打つ靴音はもう遠い。去り行く彼の背を、ただ見詰めている。
彼が行く先に広がるのは常夜。その黒い甲冑を、より暗い闇が飲み込んでは塗り込めて行く。
彼は眠りに就くのだ、同胞らと共に。そこは自分とは違う領域。彼と自分が、また別々の道を選んだのだという事実。
ああ。そういう事を理解して、酷く打ちひしがれる。今更になって、後悔をする。どうして彼を行かせてしまったのか。引き留める事をしなかったのか。ろくに話もせずに、どうして――僕は、兄と別れてしまったのか。兄と僕は道を違えてしまったのか。

(どうして)

己の中で、幾度も問い返した。答えを掴めないまま、ただ、そうした事実だけがセシルの胸を衝く。
ああ。彼はもう居ない。そこに在るのはただの暗闇、脳裏に浮かぶのはあの黒い色。鎧の彼。
甲冑を纏い、剣を持ち、戦ったという記憶。セシルとゴルベーザには、そればかりしか無い。
胸が痛い。暗闇に向けて何かを言おうとして、もう今更だと今更気付いた。兄さん。息苦しくて、セシルは己の胸を押さえた。鎧の胸当ての感触。硬く冷えたそれから思い浮かぶのは貴方の黒い甲冑。
セシルは思わず手を上げた、手遅れになってから手を伸ばした。暗闇を掻き、硬い殻の内側の温もりに焦がれて。

セシルは、そんな夢を見た。
セシルは夢見たのだ。刃の鋭さなどとは遠い場所で、繋いだ手から同じ血の温もりを知りたい。そこに痛みなど無く、穏やかで朗らかな道筋を、幸せな記憶を――貴方と共に、と。
ああ。それは理想だ。セシルがそうであればと想い、そうと願ったというだけの、勝手な期待だ。けれど。

「兄だなどと、呼ばなくていい」

もう二度と出会える事は無いだろうと思っていた人と、再会をして。
素顔の彼。簡素に黒衣を纏う、褐色の逞しい体躯。
彼はセシルを助けてくれた、困窮の中にあったセシルを救う為に来てくれたのだ。兄が、僕の為に。まさか、という驚きもあったが、それ以上に嬉しいに決まっている。
自分には親やきょうだいなんてものは無い、誰からも自分に繋がっていない。そんないじけた思いを瞬く間に塗り替えてくれた、兄という存在。それが彼。
感激をした、感動をした。セシルは大喜びで、密かに涙ぐんで、笑顔で――「無事で、良かった」。彼は、そんなセシルにただ短くそれを言ってくれた。差し出された広い掌の力強さと、温かみ。
けれど。それから直ぐに、彼は付け足した。その手で、セシルを押しやって。二人の間に明らかな距離を作って。

「私は『ゴルベーザ』だ、それでいい」

その人は、セシルにそう言った。
暗中に落とされたセシルの腕を掴み、引き上げて、確かな温もりをそこに残して、彼は手を翻す。それだけをして、彼は向かい合う事はせずにセシルから離れた。
それはまた、衝撃だった。好意というものを、互いで一方的に投げ付け合ったような気分になる。
思い出したのは、あの背中。障壁のようにも見えた、分厚い外套。あの時の光景。向こうへと去って行く兄の姿。
どうして?何でそんな、そのような事を言うのか、今更。訳が分からない。どうして?何故、そんな。
彼なりの苦悩や葛藤とかそういうものがあるとは分かる、セシルとゴルベーザの間にある事は複雑過ぎた、こんがらがっているのだ。けれど。だけどだ。
セシルとは別の側を向いた、彼の顔。そういうその横顔を殴ってやろうか、とは言わないが。酷いんじゃないか、あんまりだ、と思った。それが、セシルの正直な本心だ。
はっきり言って、腹が立ったのだ。物凄く。

今は地べたに置かれている、手提げ用の燭台の灯り。辺りには重く冷ややかな静寂が。
物事の合間の休息の時だとか、皆が気を利かせてくれたとか、そんな事で。今は、ゴルベーザとセシルとで二人きりで居る。

「貴方は、酷い人だ」

――兄さんは、ずるいよ。セシルは呟く。そこで座り込んだままで。
窺うようにして彼を見れば、僅かに眉が吊り上がる。ゴルベーザはいつも厳しい顔をしている人で、そういう兄をセシルも睨んだ。

「兄さんが来てくれて、嬉しかったんだ。本当に嬉しかったんです。なのに、貴方はそんな残酷な事を言う」

兄なんかじゃ無い、兄とは呼ぶな、って。どうして。
屈み、四つ這いに身を乗り出して、目を突き付けて。

「こっちを見て下さい」

同じ色の瞳だ。そういう事を見て認めて、その顔立ちや表情を見詰めて。
僕を、見て下さい――そう乞い掛けた。

「行かないで、って言えば良いのですか?」

ゴルベーザの面前へと向かって膝立ちをして、鼻先が当たりそうな距離になる。瞬く銀の睫毛。その視線も表情の動きも全部を見逃すまいと、セシルは食って掛かった。

「どれだけを言えば、貴方に届きますか。縋り付いて、泣いて頼めば、貴方は僕に応えてくれますか?」

……何を言うのだ。ゴルベーザの低い声音、訝るような目。彼のその面持ちは、また厳しい。怯む事も無くそれを見据える、セシルの眼差し――ああ。重く呻く。

「――嫌だよ。兄さん、僕を見捨てないで。お願いだ。僕を、置いて行かないで……」
「セシル」
「……」

そうして、セシルは腰を落として、俯いてはかぶりを振った。

「失望した?馬鹿だって思ったかな。今更こんな馬鹿を言う、本当に馬鹿な弟だって。いや、ああ、僕は貴方の弟なんかでは無いんでしたね……」

笑って、セシルは言う。調子付いた、おどけた口調。わざとらしく大袈裟に肩を竦めて、当て付けた。

「……私に、どうこうと言う資格は無い」
「貴方は、直ぐにそう言う」

苦く、返して。もういいと、そして翻る白銀を、ゴルベーザの手が留めた。

「!……」

引き止められた勢いで、セシルは姿勢を崩してゴルベーザへ倒れ掛かる。
あっ……思わず漏らした声。触れた厚み、その体温。上向く目には目が返る。同じ色の瞳。そこには、互いが映っている。
ゴルベーザの厳格な面立ち、その眼差しは、刃の切っ先を思わせた。鋭利なそれが、眼前に突き付けられている。じわりと肌に汗が浮く感覚。セシルは息を呑み――そうしてただ睨むばかりの兄に、ふと笑った。

「なんて、ね」

軽い言い振りで目線を逃がして、ああ。怒らせてしまったのだったら、すいません。そう添える。

「言ってみただけです」
「……」
「びっくりしましたか?全部、以前に読んだ本の受け売りです――混ぜこぜですけど。昔に読んだ、何て言ったかな、そういう物語の、そんな場面の……」

――セシル。言い連ねるのを遮って、ゴルベーザが呼び掛けた。
手首を掴む手に、強く力が込められる。

「お前は……酷い奴だ」

ああ。私には、どうこうと言う資格など無い、が――ゴルベーザの低い声。間近の息吹が、耳朶をくすぐる。思わず竦んだ身体を捕らえて、ゴルベーザは体格任せにセシルを岩壁に押し付けた。
覆い被さるその体躯。褐色の、逞しい身体。より近付いて、互いの銀髪が混ざり合う。

「お前は、私を強くも駄目にもしてくれる」

指に、指が食い付いた。ゴルベーザの大きな手。噛み合っては絡み合い、白を捕らえる。逃がしはしない――或いは「逃げはしない」と、そういうように。

「ああ、驚いたとも。お前には、もう何度も驚かされている。今も、今までも、多分これからも」
「兄さん」
「……初めは、私なりの、償いの気持ちだった。セシル。お前や他のもの達に、せめてもの罪滅ぼしをしたいと」

だが――……にいさん?セシルからも呼び返しても、それへの返答は無い。ゴルベーザは続けた。

囚われていたお前を見付けて。目覚めぬお前を見て、お前へと呼び掛けて。
お前に触れて、お前を揺り起こそうとして。また呼び掛けて。お前が、私に気付いてくれて。

輝かしい、純白の立ち姿。柔らかな微笑み。静かな声音。同じ色の、その瞳。

「――お前は、私を兄と呼んでくれた」

岩盤に映る影が揺らめき、合わさって、二つで一つの形になる。
ああ。お前と話をして、お前の仲間達からもお前という人となりを知り、嬉しかった。お前は私にとって、ただ一つのとても大事なものだから。本当に、嬉しかったのだ。だから。

「私は罪深く、欲深い。漸く出会えたお前を、また手離すなど……嫌だ」
「……」
「お前は優しい。私などには勿体無い、掛け替えの無いものだ。皆が、お前を愛してくれている。そして、私も気付いたのだ――ああ、目が覚めたような思いだった。私は、お前を愛している」
「――兄さん」

影が歪んで、形を変えて。二人でただ手を伸ばし、ただ手を掛けて、ただ互いに触れて、そして。

「……」
「……」

どれだけ見詰め合っていただろう。
気付けば赤く灼けた顔。その息遣い――我に返った、という、そんな自覚。

「……兄さん。ごめんなさい」
「何を謝る」
「いや、その、さっきは、とんでも無い事を言ってしまったな、と」
「今更、恥じるな……」
「だ、だって、つい、かっとなってやった、というか……今は、反省してる」

ああ。セシルの肌はとても白くて、だから、見て分かりやすい。長い髪から覗けた、その耳までが赤かった。
ごめんなさい。ああ、うむ、こちらこそ、すまない――互いで、謝る。

「赤恥ついでだ、白状しよう。抱き締めてやりたかった。だが、お前はとっくに大人で、責任のある立場で、皆も居て――何より、私などがお前に触れて良いものかと、そんな事を考えた」
「そんな事――兄さん。ああ、多分、兄さんが思っているよりもずっと、僕は兄さんの事が好きだよ」

だからこそ、そう距離を作られたり兄じゃないなんて言われて、腹が立った訳ですけど――ただ一人の兄さんにそういう事を言わせてしまう、自分の不甲斐無さだとかにも。
……すまない、有難う。どういたしまして。

「お前は、恥ずかしいという時に余計に口数が増えるのだな……」
「そんなの、気付かないで下さい……兄さんの照れ隠しは、分かり辛い。怒らせてしまったのかと心配になります」
「――間抜けな話だ。ただこうして、もっと話をすれば良かったのだな」
「そう、ですね……。でも。なら、間抜けも落ち度も、お互い様です」
「そうだな」

ゴルベーザがふと表情を緩めたのを、セシルはただ窺って。

「どうした?」
「そうして笑ってくれた方が……もっと、素敵なのに。ああ、でも、兄さんのそんな顔を知っているのは僕だけ、なんていう、それもいいな。独り占めだ」
「馬鹿な事を」

それから互いで笑った。

「兄さん」
「何だ」
「まだ、どきどきしている……。兄さんも」

背丈や体付きの違いに甘えて、セシルはゴルベーザの胸に凭れる。ああ。素肌のその温かさ。
灯り一つがあるだけの、薄暗い中で。長い沈黙。気まずい、気恥ずかしい、くすぐったい――温かい、そんな空気。

「……これは、何かの受け売りだとか、別の誰かの言葉を借りたとか、そんなでは無くて……僕の、正直な気持ちです」

触れ合うままで二人で向き合い、話し合う。少しの緊張も混ぜた、けれどとても柔らかな気配。そういう時間。

「兄さん。有難う。また会えて、嬉しい」
「……ああ」

セシル。はい。

「――私は、ゴルベーザだ。そういう色々な事があって、だからこそ、お前とこうしてまた出会えたのだと……今は、そんな風に思える。ああ。お前の事を見離すなど、するものか。離したくなど無い」
「兄さん」
「このままで、とか、また……という約束は出来ない。だが……」

ゴルベーザはセシルを見詰めて――手を拾い、その甲に口付けた。
白を頂く、褐色の手。触れては見て分かった、互いの輪郭や傷痕。それを、支えては包み込む。

「せめて、誓おう。どれだけのものが我らを隔て、分かつとも、セシル。私は、いつもいつまでもお前を想っている」

触れ合う、その温もり。その言葉。
ゴルベーザは殆ど笑わない、口角を緩めただけの笑顔。そういう人なのだ。それでもセシルにとってそれはとても素敵なもので、だけど、なら、せめて自分が……なんて思って、セシルはとびきりの笑顔で兄に頷く。

「僕だって、そのくらい、兄さんを愛しています」

愛おしさを陰らす寂しさや意固地な思いや腹立ちや、そんなものをあっという間に塗り替えてくれたのは、やっぱり、兄だった。
言葉や想いも、また一つの魔法だ。それはきっと星をも超えて、そう、距離や時の流れなどは関係無いのだ。


二人の間に引かれた糸は、真っ直ぐに互いへ繋がっている。





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