2017-01-01 00:00

■続きカイセシ

■毒電波なIF展開。カイセシ。
我が主には拾い癖というヤツがあるらしい――事もあろうに(またしても)、人間一人を拾って抱えて帰って来た。
ああ、これは疑念だとか背信行為だとかそんな大それた事ではなく、だが、ああ、しかし、畏れ多くも――何のつもりだ、と彼の人を疑うような事を考えた。
気まぐれだとでも言うのか。余興のつもりか?
主の腕の中で伸びている、例の黒い殻付きの見慣れた身体。こいつを殺してやろうとそう考えて、結局は何も出来ずに退いて――それで、どうしてこうなった。
主の腕の中で伸びているセシル。慰みものにでもするのだろうかと思い浮かべて、妙な苦みを覚えて密かに呻いた。



我らが主は、今は居ない。それを確かめて、牢の戸を閉ざす仕掛けを解いた。
特別立ち入りを禁じられているとかそんな訳でもなく、鉢合わせたからといってどうという事も無いが――ああ、いや、やはりここでは会いたくはない。
ぐるぐると回るばかりの頭を抱えて、苛立ち任せに大股で部屋へと踏み込んだ。

「…」

肺に染み入る、どこか生温かい空気。事後だとかそんな言葉が脳裏を過ぎり、苦みが胸に広がる。
きっちり鎧を着込み、槍まで携えた自分が馬鹿らしくなる。ここはそういう場所ではないという空気。乱雑に渦を巻くシーツの中に投げ出された身体。貫頭衣の裾から覗く白い素足――多分、はいてない。
際どい角度で放り出された生白い足を点々と染める青が目に付いた。それが変に艶かしい。
そこらに転げた瓶を見付けて、そうかポーションか薬液の青かと訳を知り、つまりはそれでどういう遊びをしたのだろうかと少し悩んだ。
ああ、上司の性癖なんぞどうでもいい。セシルの何処に何を突っ込んだのかとかそれでセシルはどうしたのかとかどういう顔でどういう声を出したのだとか、そんな事はどうだっていい。
それを思い浮かべては、ぶんぶんと必死に首を振って振り払う自分を馬鹿だと思う。
無防備に寝転がるだけのこいつを前に、おれはしょうきにもどった。セシル、と呼び掛けるとそれで目覚めたか気付いたのか、緩慢に顔を上げる。

「命拾いしたな」

上向いたセシルを見下して、それらしく笑って俺は言う。まるで悪役だ、という自覚はある。だからそれらしく俺は笑う。

「ゴルベーザ様は、お前を気に入られたようだ。折角拾って貰ったんだ、精々媚びて、生き長らえてみせろ」

寝台の縁に腰掛け、身を屈めて、例の青を垂らした足に触れた。ひくりと小さく、それが跳ねる。
…妙な場所に歯形を見つけて、あの御人はどういう顔をしてこういう事をするのだろうと考える。そもそも俺はあの人の顔も知らない。想像力がまるで追い着かない。
下にした身体からは、夜中のそういう匂いがした。俺は更に身を屈める。薫りはより深くなる。
セシルが纏う簡素な上衣。多分、この布きれの下は素っ裸だ。完全武装の自分は恐らく空気を読めていない。
ここはそういう場所だという空気。布の下の生温かい裸体。竜の鱗とは別のもので温められた身体。
……カイン?――ああ。本当に、馬鹿げた程に俺は魂消る。声を掛けられ、ぎくりとした。聴き慣れた声は酷く嗄れていてた。

「ああ、カイン、久しぶり」
「…」

ああ、お早う、この野郎。
ぼんやりとか夢現だとか、そう表現するのがぴったりの間抜け面でセシルは俺に挨拶をした。
寝惚けている。明らかに螺子が外れている。まるで腑抜けたその顔を見て、そんなに好かったのかと言いかけて止める。「うん」だの、ああ好かっただのと頷かれたなら、俺はどう答えれば良いのか分からない。
完全武装の俺に対して何の指摘も無しに、セシルはそこで寝転げている。捲れた足には青と赤が転々と。我らが主のお手付きの身体。
しとりと熟れた果実を前に、俺は手を挙げ、尻尾を巻いて退散した。





セシルを殺せば俺は解放される。そう思った時期もありました。
甘ったるいあの香りに背を引かれては振り返る俺に、上司はいちいち小言を言う。

「あまり、あれには触れてくれるな」

それが、礼儀というものだろう?――そう言われた俺は、どういう返事をすれば良かったのだろうか。
『あれ』とは何の事だとは、多分、訊くまでも無い。雷を落とされる覚悟はして、それが本当にサンダラだったりサンダガであったりはしないようにと祈った。
しかし随分とお気に召されたようで。俺は上司の馬鹿でかい鎧を見上げながら、『あれ』について話をする。

「お前の言う通り、私はあれを気に入ったのだろうな。拾い物だと言えば聞こえが悪いが」
「…聞いておられたのですか」

お人が悪い。
いやまさか、道具や術を使うばかりでなく覗き趣味まであるのか――とは言えず、俺は努めて口を噤む。

「お前の言葉は、全て聴こえている」

理解ある上司の御言葉だ。どんな顔をして、それを言うのか。
この人の素顔を見てみたいと俺は思う。兜の下のその唇に噛み付いたなら、セシルの残り香くらいには有り付けるだろうかと、また馬鹿げた事を考えた。

「お前にくれてやるつもりだったが……思いの外、あれは愉しい」
「…」
「どうしてだろうな、あれには妙に惹かれるのだ。妙な気分になる」
「…」

そんな事を俺に言われても困る。あの苦味が、また広がる。
ええ、よく存じ上げております、ゆうべはおたのしみでしたね。とでも言えば良かったのだろうか。
不出来な部下で申し訳無い、失礼ながら、俺はあんたの鉄面皮を引っぺがしたい。
この鎧の内側には中身があるのか、もしかして俺の上司は甲冑なのかと考えた事は幾度かある。どうやらその心配は無いらしい、彼は生身でセシルと突っ突き合ったらしいのだから。
蕩けたセシルにそそられて、がっつくこの人というのが全く想像出来ない。だが俺には覗き趣味など無い。体験談すら聞きたくない。
ああ御馳走様でしたというそんな話を聞くよりも、その御馳走の御相伴に預かりたいとかそんな事でも無く、俺は一人で一対一で丸ごとそれを平らげたい。指一本でもしゃぶらせたくない。心底にそう思う俺を余所に、上司の言い訳は続く。
多少の遊び心というものはあったが、だが後々にはちゃんとお前にくれてやるつもりで――ああ、しかし、実に申し訳無いが。
ああ本当にすまない、という、そんな調子で上司は言う。はい、そうですか分かりました。と、俺は言うしかない。
立ち止まって畏まって、俺は俺の主を睨む。俺の視線なんぞでは、あの分厚い兜を射抜く事も出来ない訳だが。
だから我らが主は、いけしゃあしゃあと宣言するのだ。俺の悩みを見抜いた上で、取り巻く事情を全て理解した上で。

「あれは、私が貰う」

ああ。貴方は、本当に――




<続>
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