2017-01-01 00:00

■月兄弟TA

■いちゃつく月兄弟。TA。
――ゴルベーザだ。
彼は己をそう称した。毒虫を指すそれこそが己には相応しいと……己を兄とは呼ぶな、と彼はそう言うのだ。
瞳を逸らせて、顔を背けて。そうしてそれを言う兄を――ああ、哀しいと、寂しいとセシルは思った。

「――僕を弟だと思ってくれてはいない、という事ですか」

魂をも手離しかけた僕に、貴方は心ごとで呼び掛けてくれた。嬉しかった。兄と僕との絆を、想いを確かに感じられた。なのに今更――自分はお前の兄なんかではない、って?
ああ。貴方は僕を、弟と思ってはくれないのか。殊更に大仰にしてセシルは語り、ゴルベーザを横目にしては、よよと泣き伏すような真似をする。貴方は、ああ、そんな。

「……僕を、愛してはくれていないのだと」
「そうではない」

反射的な――明らかに狼狽をした、そんな声。
ゴルベーザはそれを口にして、足を踏み出しては身を乗り出して。しまった、という顔をする。
二人は見詰め合い、互いをただ窺って。そこで堪えかねて、ついつい笑ってしまったセシルを、ゴルベーザが睨む。

「お前は、随分と……意地が悪いのだな」
「貴方が知らなかっただけですよ」

それに。意地が悪いのは自分ばかりじゃない、兄さんこそが酷い。本当に、全く、貴方は酷い人だ。

「……ああも必死にもなって僕に呼び掛け続けてくれたこと、ただ僕の名前を呼んでくれたこと、僕の手を握り締めてくれたこと、抱き締めてくれたこと……僕がどれだけそれを嬉しく思ったのか――まるで、分かってない」

一方的に好意を投げ付けて、それで満足してる。

「セシル」
「僕だって……兄さんに、してあげたいんだ」

沢山の事を。沢山のものを、兄さんにあげたい。
ただのお返しだとか、罪滅ぼしだとか、理屈は何だっていい。僕は兄さんとただ向かい合って、色んなものを贈り合いたい。

「代価を支払うべきは、私の方だ」
「……なら、それで構いません」

また見詰め合い、互いに目を奪われる。

「兄と呼ぶなと、貴方がそう言うのなら――なら、僕は貴方の弟ではなく、貴方を想うばかりのただの愚かな男だ」
「愚かなのは……お互い様だ」

知らず身を寄せて、黒と青とを重ね合わせて。
セシルの手が黒衣を掴む。今更逃げはしない、とゴルベーザは苦く笑った。
――本当に、嬉しかったのです。セシルはゴルベーザの背へと腕を回し、寄り掛かっては抱き寄せる。
貴方の言葉が、嬉しかった。貴方の想いを心で知れて……ああ、僕はなんて幸福なのだろうと、嬉しくて、本当に本当に嬉しく思って――それを語るうちに、セシルは泣いてしまっていた。
セシル。名を呼んで、躊躇って。ゴルベーザは迷いながらも、セシルの肩に触れ、肩を抱く。
互いを手中に掻き寄せて、固くきつくと抱き締めた。そして互いの温もりを思う。肌身を覆う鎧や布が、遮りのようにも思えた。
兄さん、僕は――セシルは兄へと乞い掛ける。

「兄さん。……キスを、したい」
「…セシル、それは」

ゴルベーザは僅かに目を見張り――自嘲気味に、ふと笑う。
また強く抱き、より近くへ寄り合って。ゴルベーザの広い手が、セシルの髪を撫でては梳いた。

「……駄目だな。お前を思うと、余裕が無くなる」
「兄さん」

輪郭が一つになる。

「セシル」
「…兄さん」

ゴルベーザは背を屈め、セシルは爪立って背伸びをして。躊躇いがちに触れ合わせては、次第に強く希う。幾度か口付けて、見詰め合い――それからまた幾度も口付け合った。
相対しては抱え込み、互いの髪と衣とを掻き乱す。音を立てて口を吸い、声を吐息を奪い合い、唇を重ねて。
ああ、あたたかい――と、そう思った。



















「色々とあるのは分かる、忘れろなんて言える訳も無い。だが――それはさて置き、だ。セシルに『兄さん』って呼ばれる事に慣れないとか、ぶっちゃけ照れてるとかってのもあるんだろ?」

変に意識しちまって、何だか妙に気恥ずかしくなったとか、そういう。
エッジがそんな事を言った。茶を呷り、そして少し離れた位置に座したゴルベーザを指差して。

「そうなんですか?」

リディアとルカとエッジと、兄と。その4人で旅した時期があったのだとは聞いていたが、つまりは己よりも長く近しい位置で兄と過ごしたエッジがそう言うのだから、そうなのだろうか。密やかに羨望を抱きもしながら、セシルはエッジと兄とに問い掛ける。
ゴルベーザは何も言わない。先に声を掛けたエッジにもセシルにも、目を向ける事さえしない。ただただ続く、沈黙。ぱちぱちと鳴く焚き火。
そもそも、話を聞いてさえいなかったのではないか。そう考えもした頃に、ゴルベーザはやおらに顔を上げた。

「…………何を言う」

――その妙に固くか細い声音に、先ずカインが吹き出し、つられてセオドアも笑う。
あっ……す、すいません!――すぐに口を押さえては謝るセオドアに、エッジも笑い出し、ああ、いいんだよ、いや可笑しいよな、照れる所じゃないよなぁ、硬派を気取るんなら、もっと堂々としとけって言うか……なぁ?などと言っては顎で指し、セシルへ話を振った。

「……」

兄は弟を見て、弟も兄を見る。ただ見詰める。
言うべきを言えず、言うべきが思い当たらず……何とも言い難い表情だ、と互いに見ては思った。

「――いや、だから、そこで照れるなよ」

おいおい――と、再度エッジがそう指摘するまで二人は固まるままで居て、向き合う顔はどこか赤く灼けてもいて。
またの失笑も揶揄もさて置いて、焚き木が爆ぜては立てる音をただ聴いた。




<終>
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