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2017-01-01 00:54

■ほのぼのセシゴル

■ほのぼのセシゴル。「ねんがんのねこみみフードをてにいれたぞ!」

「――兄さん、居るんでしょう?」

常日頃の通り、身を隠しては密かにと動向を見守っていたつもりが、今日はどうしてか感付かれてしまったらしい。
セシルにそう呼び掛けられて、ゴルベーザは迷いはしつつも観念し、彼の前に姿を見せた。
顔を合わせたからには、軽く挨拶などをして、どうしたのかどうしているのだと他愛も無い話をして――そこでふと、セシルが切り出した。

「兄さんには、いつも助けられてばかりだから。僕では兄さんの盾にもなれないだろうけど、せめて何かを返せたら――何かを贈れたら、と思って……」

そう言うと、ゴルベーザの眼前へとそれを差し出す。

「はい、ねこみみフード」
「……」

ゴルベーザは目を見張り――目を疑い、目を凝らしては”それ”を注視した。
明らかに女児かそれに近い齢の少女向けのものであろう、品名の通りに猫を模した耳付きの頭巾が、そこにある。

(……これは、あれか。あれだろうか)

案ずるに、これはセシル流の冗談であり、私は弟の額あたりを小突くなりして笑ってやれば良いのだろうか――見ての通り、セシルは今は暗黒の兜を着けているので、多少力加減を誤ってもそう痛くは無いだろう。
組んだ腕を組み直すのに隠しては先の尖った己の手套をちらと眺めるなどしつつ、そこまでを細やかに思い描いてから、ゴルベーザは改めてセシルを見る。彼の手にあるそれを見る。

「……」

ただしなやかに白く、見るからに柔らかなその頭巾は、極めて簡易な造形でありながらも愛らしさというものをこれでもかと表している。
ゴルベーザは己を顧みる。フードを見る。……何か、自分とは根本的に次元の異なるもののように思えた。
そればかりでは無い。何より、どうもし難い事情がある。

「セシル。すまないが、私はそれを身に着ける事が出来ぬのだ……」

まるで言い訳のようだが、事実そうであるのだから他に言いようが無い。
この世界にはそうと取り決められた定めというものがあり――ただ単純に、その型や身に着ける側の体格の問題などもあり――故にゴルベーザはこのアイテムを装備出来ないのだ。
すまない、とゴルベーザは重ねて詫びた。そうして平に謝る兄を、しかしセシルはただ仰いで。

「ああ、大丈夫だよ。兄さんは、髪飾り装備のアビリティを持っているよね?」

直ぐにそう返されて、ゴルベーザはその一つきりの眼光を瞬かせた。
セシルとはそれぞれの立場上、敵対関係にはあるが、ただ兄弟として接する機会は少なくも無く、些かながら互いの内情を明かすような話をするという事もそれなりにある。
だが、己はどれそれを使用しているとか身に付けているとか、そこまで微細に渡る会話を交わした覚えは無い。

「――それなら、これも装備出来るから」

そして続けて、セシルが言う。ゴルベーザは尚も首を捻る。
もしやとすれば、ゴルベーザがそうと気付かなかっただけで、それをそうと口にした事もあったのかも知れないし、ひょんな事からセシルが独自にそれを知ったのだとか、そういう事なのかも知れない。
何にせよ、本当に全くその覚えが無いので、弟のそうした看破と洞察力にはゴルベーザも舌を巻いた。

「よくもまぁ、私がそれをと知っていたな……」
「うん。兄さんの事は出来るだけ全部、知っていたいから」

感嘆として言うゴルベーザに、セシルは照れ臭そうに首を傾けては頭巾を胸に抱いた。
セシルがそれだけ兄を見通しているのだと知れば、ゴルベーザもまた気恥ずかしくなり、幾らか恐ろしくもなり、つい唸っては誤魔化しがてらにより固く腕組みをする。
しかしどうやら、揶揄や戯れのつもりでは無いらしい。つまりはセシルは本気でこれを兄へと贈るつもりであるらしい。

「――皇帝にはずっと、色々とやられてばかりだったからね。こうして、ねこみみフードを奪えて、これで意趣返しにはなったかな」
「……奴の持ち物だったのか」
「念願のねこみみフードを手に入れて、直ぐにでも兄さんに届けたいな、って思っていたら、兄さんの気配を感じて……ああ、何だか運命的だよね」

セシルは胸にした頭巾をぎゅっと抱き締めて、どこか陶然とした素振りで兄を見上げた。
――まぁ、いい。この際、何がどうだという事はどうでもいい。ゴルベーザは思案をもう打ち切り、セシルの側へと向き直る。

「ほら。兄さんに、きっと似合うと思う」

セシルは改めて、頭巾を広げて見せた。どのような顔をしてそれを言うのか、暗黒騎士のその鎧姿からは窺い知れない。

「そうか……?」

正直、己としてはそうとはとても思えなかったが、傍目からするとどうなのかなど、ゴルベーザにはやはり知り得ない。何であれ、他でも無いセシルがそう言うのなら、という気にはなった。

「……」

ゴルベーザは頭巾を受け取り、繰り返してそれを眺める。
やはり、とても柔らかい。ゴルベーザの硬い甲冑と重ね合わすにしては、あまりに不適当なものに見えた。
いや、不調和でこそ正しいのか、己はカオスの者なのだからな――そう馬鹿らしい事を考えもする。

「ねぇ、兄さん。良かったら、今ここで着けてみて?」

頭巾をしげしげと見詰めるのみの兄を、ほら、と言ってはセシルが促す。
布の端と端とを掴んで広げてみたりなどしていたゴルベーザは、言われてセシルに顔を向け、それから再度頭巾に視線を落とした。

「着けてみてよ」
「……いいですとも」

二度そう言われて、ゴルベーザは頭巾を睨んだままで遂には折れた。

「……」
「……」

頭巾とそれを持つ兄の手に見入るセシルを、ゴルベーザも見て返す。それに気付いて、セシルは首を捻って兄を仰いだ。

「兄さん、どうかした?」
「そうして横で見られていては、何と言うか……落ち着かん」
「え?」
「いや、だから……」

口ごもる兄に、セシルは漸く思い至ったらしく、ああ、と大きく頷いた。ごめん、と一言謝り、後ろへ身を翻そうとして、そこで止まる。

「……兄さんって、結構照れ屋さんなんだね?知らなかったよ……」
「何を言う」

心外だとばかりに即座に口を挟まれて、セシルは思わず声にして笑ってしまった。

「ああ。兄さんって……可愛いな」

――そんな事を言われて、ゴルベーザは見て分かる程に身を竦めて、そして取り落としそうになった頭巾を慌てて掴む。

「っ、戯言はよせ……!!」
「ごめん、兄さん」

セシルは今度こそくるりと回って背を向けて、それを見届けたゴルベーザは軽く項垂れ、密かに深く息をついた。
兄を背にしたセシルは、それを被ろうとしているのだろう気配につい耳をそばだてながら、彼がねこみみフードを付けた姿を想像した。

(ああ、どうせなら僕の分も用意して、お揃いにすれば良かった)

兄さんはやっぱり、恥ずかしがるだろうけど。なんて事を思い巡らす。
そうして、セシルは声を潜めてまた笑った。

「……もう、いいかな?」

しばらく待って、更に身動ぎをするような様子も無いので、セシルはそう尋ねてから振り返る。先程の通りにそこに立つ、兄を見付ける。

「……」

要塞を思わせる、強固で厳つい黒の甲冑。頭の天辺から足の先までほぼ総てが金属製で、その背に垂らしたマント以外に布らしい部分は殆ど見当たらない。
それらを順々に睨んで見据えた後に、はたと気付いてセシルは兄の兜を見上げた。

「兄さん。兜の下に、付けているんだね……」
「うむ」

ゴルベーザはこくりと頷くと、己の頭部に手で触れる。

「おかしいか?」
「ううん……」

セシルは首を左右にして、手を口元になど添えて、ゴルベーザを見詰めた。じっと兜を凝視して、小さく呟く。

「その甲冑の下にねこみみフードを付けているんだと思うと……凄く、可愛い。それを知っているのは僕だけだなんて、凄く素敵だ……」
「?……すまん、何と言ったのか聞き取れなかった」
「ああ、うん、大した事じゃ無いよ。気にしないで」

再び首を横に振って、何でも無いから、とセシルは己の言葉をなぞった。
ゴルベーザは頭巾を確かめるように兜の上辺を押さえたり首を捻ったりとを幾度かしてから、セシルへと振り返る。そして咳払いのような仕草をして、軽く頭を垂れた。

「……有り難う」
「どういたしまして」

セシルも倣って会釈をして、贈り贈られての礼を交わし、共に顔を上げて見詰め合った。
とは言え、揃って鎧姿の兜越しで、表情も何も見て取れない。けれど、きっとお互いに笑顔なのだろうと、目では知れずともそう感じられた。
なので、兜の下で笑う。甲冑越しに微笑み合う。セシルは頭巾をくれた皇帝を思い起こし、今だけは彼に感謝をした。




<終>
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