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2017-01-01 00:00

■ゴルセシ(エク→バツ描写あり) ※18禁

■リクエストで書かせて頂いた、「Sな心境の兄さん×セシル(糖度濃厚)+エクスデス→バッツ」。性描写はゴルセシのみ。 ※18禁※

黒が、視界を覆った。

あの幅広の外套に絡め取られたのだとは、直ぐに気付いた。
ふわりと布に纏われ、固く掴まれては抱え上げられて。そのままで、空を跳んだ――のだと思う。そんな浮遊感があり、暗闇の中で僕はつい彼の鎧にしがみ付いて……ああ。囚われたのだと、今更、思い至った。



間抜けな話だ。馬鹿みたいだ。けれど、と自分に言い訳する。
突然担ぎ上げられ、運ばれて、何も答えてはくれなくて、全く訳が分からぬままにただ面食らって、抵抗らしい抵抗も何も出来ず、結局は問い掛けらしい事は何も言えず――どれだけ空を駆けたのか、それさえも分からない。
『光の戦士』たる彼などには、恐らく、危機感が無いにも程があるとか、無防備が過ぎると、それはもうこってりと絞られる事だろう。

(困ったな……)

あの人にそう叱り付けられるという事がありありと想像出来て、どう弁解するべきかと悩み、そもそもここは何処でどうやって帰れば良いのかと、更に悩む。
思わず唸り、身を捩れば、腰掛けていた寝台がぎしりと軋んだ。

「……」

魔法仕掛けの燭台の灯りだけが照らす、薄暗いこの部屋の中で、寝台に座して彼を待つ。
実際の時刻などは分からないが……室内のほの暗さが余計にそうと思わせるのだろう、夜のそういう雰囲気がある。
ああ、だから、まるで。これは、さながら――そういう、逢瀬のような。
部屋と寝台と、そこでの夜の。知らず知らずにおかしな事が思い浮かんで、はたと気が付き、かぶりを振る。頬が染まるのを自覚して、慌てて、妙な連想を振り払う。

――ああ。一人で焦って、うろたえて。
ふと気だるさを覚えて、シーツの中に手をつき、項垂れた。
ああ。動悸のせいか、眩暈がする。髪が垂れて流れて、霞む視界を更に覆い隠して。そのまま寝台に突っ伏しかけて……差し出された腕に、身体を抱き留められた。


「セシル」


名前を呼ばれて、顔を上げる。
乱れた髪の隙間から、あの黒い甲冑が見えた。

「……兄さん」

禍々しい闇色を見て取って、それでそう言うのはそれこそおかしな話だけど、でも、ほっとした。何だか凄く、安心する。
甲の側は黒くて掌の側は黄色の、見慣れたあの手套が、ばらばらの僕の髪を払ってくれた。
『海星みたいな手だ』なんて事を、バッツが言っていたのを思い出す。彼の発想は突飛で、面白い。スコールやジタン達は、何を言ってるんだか、とか呆れていたけど。
それを振り返っては思わず笑ってしまって、しまった、兄さんに変に思われたかも知れないと、慌てて口を閉じた。

支えてくれる腕に甘えて、寄り掛かりながら、ちらりと窺う。
兄さんは、いつからそこに居たのだろう。いや、僕が気付かなかっただけで、ずっとここに居たのかも知れない。分からない。
あれ……?と、自分に首を傾げた。寝惚けているのだろうか?朧に意識が曇る。眠気覚ましに目元を拭おうとはしても、上手く手が動かない。
手足がかじかんで、変に震えて――ああ、そうだ、呪縛の冷気を吹き込まれて、それで、と順に状況を思い返した。
構える間も無く、不意を打たれたのだ。油断があったのだ、とは認める。感じ取った兄さんの気配に、ただ期待をしてしまった。敵同士である事など忘れて、兄さんが僕に会いに来てくれたのだと、それだけを思って、兄の黒を見付けては安易に喜んで。
そして、覆い掛かった漆黒。呪縛の冷気。呆気無く囚われてしまった、僕。
それをした相手に支えられては自分から寄り添っている、今。
いや、ほら。束縛を受けて、無抵抗にならざるを得なかったのだと、また言い訳する。

「すまない」

そんな風に頭で思っていた事を、知らずに口に出してしまっていたのか。
突然そう謝られて、兄さんは僕の手足をさすってくれた。

「これはこれで、あくどい遣り方だとは思ったが……捕まえる為の手段だとしても、お前のこの手や足を潰すような事をしたくは無かったのだ」

……物騒な事を、さらりと言う。
いや、意見があるなら剣で証明してみせよとか戦って示せと、兄さんはそんな事ばかりを言う、そういう人なのだ。言い方がいちいち殺伐としていると言うか。とは思うので、まぁ、以前はそれでいちいち驚かされてその度に怯んだり竦み上がったりなんかもしたものだが、今は別段、そんなには、どうという事も無い。
彼という人を知っていき、慣れていく。それは、嬉しい。とても。
虜囚の身であるのに、妙に呑気に考え込む。そろりと撫でさすってくれる、その感触に浸る――出来れば手套を取って直に触れて欲しいと思うが、それを願うのは流石に、甘えが過ぎるだろうか。

「……仲間の事を考えていたのか?」

またぼんやりとしてしまい、そう問われて気が付いた。
兄さんの手が、僕の頬に触れる。僕もそこへと手をやって、その小手越しに手を重ねた。

「ひとで……」
「何だ?」
「ううん、何でも無い」

バッツが言うのをまた思い返して口にして、そうしたら、数多の黒魔法を繰るその手が、何かとても可愛らしいもののように感じられて。そんな事にまた笑いそうになったのを堪えて、誤魔化す。
兄さんの顔を――兜を仰ぎ、問われた事へと、うん、いや、そればかりでも無いけど、と兎に角答えて頷いた。

「……」

一つきりの眼光が、じっと僕を見ている。
変な事を言ってしまったのを、ちゃんと聞かれていたのだろうか。こう寄り掛かって呆けていないで、いい加減に起きろとか、そういう事だろうか。
でも。本当に皆に叱られてしまうだろうけど、だけど、もう少し――もう暫くは、このままで居たい。身体が、兄の体躯に甘えてしまう。
兄さんは、カオスの戦士だ。敵の側の人なのだ。囚われた僕は、人質にでもなるのだろうか。何か見せしめにでも?
何であれ、兄さんになら……なんて、考えてしまう。呪縛を受けて、頭がろくに動かないのだ。だからだ。だから、敵の側に捕らえられたというのに、こう安穏として、兄の鎧に凭れている。
身体は凍えたままで、感覚が希薄で、自分の四肢すら遠くに感じる。
ふと怖くなり、もがくようにして手を足を揺り動かして、黒い甲冑に縋り付いた。

――ああ。考え至って、面映く思う。
見詰めているのは兄さんじゃなくて、僕の方か。さっきから、兄さんの事を窺うばかりだ。なのに、はっきりとは目を合わせられない。
自分から寄り掛かって、しがみ付いて。ちらりと見ては、目線を外す。ああ駄目だ、ちょっと、どきどきして来た…。

ああ。兄さんの大きな手が、僕を撫でてくれる。
最初は落ち着かなくて、でも、今はただ安堵だけがある。胸はまだ、どきどきとしているけど……それも、何だか心地好い。

「寒い、か?」
「平気だよ」
「すまない」
「平気だから」

淡々と声を掛け合い、肩を抱かれて、肩を寄せる。
結局、何で、と理由などを問うよりも、今はただ兄さんとこうして触れ合っていたい。兄さんに触れたい、触れて欲しい。そんな風に考える。

「……全くどうかしている、乱暴な遣り方だが……どうとしてでも、こうしてお前と二人で居たかったのだ」

え?――首を傾げたら、笑うなよ、と先に制してから兄さんは続けた。

「お前を愛している」
「……」

いきなりだった。

「えっ……?」
「私は、お前を愛している」

憩うにしては、正直なところ具合の良くない硬い甲冑に凭れて、それでもうつらうつらとしていたのが、途端に正気に戻った。
繰り返してそう言われ、圧倒されて。

「あ、……っ!」

よろめいた僕の上に、黒い甲冑が覆い掛かった。
ぎしぎしと、それは激しく寝台が軋む。その脚が折れてしまうのでは、とこんな時にそんな心配をした。ああ、実際は、それ所じゃない、全然。

「言葉だけでは足りぬと、もっと確かな証が欲しいと言うのなら……何でもしてみせよう」

景色が変わり、眼には黒が映る。寝台に押し倒されたのだという感触。
互いの鎧がぶつかって、がちゃがちゃとした音が立ち騒ぐ。黒くて黄色いあの手套が、腰当ての辺りを爪弾いた。

「……っ」

思わず震えて、息を呑む。
兄さんの言葉が、ぐるぐると頭の中を巡る。散々それを考えて、だけど、それらの一つも飲み込めていない。
え、ええ??何をしてでも、って……つまり、兄さんはこうして、それを言う為に、こうする為に、僕を?呪縛を掛けて、捕まえてでも――って?
無茶苦茶だ。そういう事は、もっと、ムードのあるものだと思っていた。でも兄さんらしいと言えば、らしい。ああ。そんな事を考えている場合では無いけど!
呆然としながら慌てふためき、そこにそうして縫い付けられたようにして、ただただ顔を上向けて兜を見詰める。
鼓動が、がんがんに滅茶苦茶に鐘を打ち鳴らす。胸はそうしてばくばくとして、押し上げられた血で頭の中がぐらぐら揺れた。

「にい、さん……」

兎に角、何かを答えようとして、呂律が回らず舌を噛みかけ、呻いて、唸って、戦慄く口元を両手で押さえた。
触れた頬が酷く熱い。鼻まで熱い……じんと沁みて、そこが痛い。どうしてだろうか、ああ、泣いてしまいそうだ……。
何度も何度も瞬いて、赤らむ顔を逸らそうとして――顎を手套に掴まれて、兜の面前に向き合わされた。

「セシル」
「兄さ、ん……」

薄暗い部屋に尚映える、黒い鎧。その漆黒が、僕の視界を埋める。
兄がそれを言った、意味は分かる。それをした意図だって分かる。ただ――それよりも。兄さんが、僕を見ている。僕は兄さんを見ている。ただそれだけの事が、堪らなかった。
怖いという訳では無い。驚いて、戸惑って、恥ずかしくて。愛している、というその言葉が、酷く重くて。
ああ……また呻いて、漏れ出てしまいそうな涙を堪えて、僕は兄を睨んだ。

「……いつも兄さんは、自分の言いたい事を言うばかりで……ずるいよ」

兄さんの甲冑の接ぎ目に手をやり、爪を立てる。
揺るぎもしない鋼を、強く押した。思い詰めて、息苦しくて、喉から言葉が溢れ出る。

「兄さんは、ずるいよ。そんな……そうして、いきなり言って、押し付けて来るばかりで」
「セシル」
「……好きだ」
「……」
「好き、だよ。僕だって、兄さんの事が好きなんだ。僕だって兄さんの事を、愛してる……!」

――愛している。自分でも口にして繰り返したら、余計に胸が熱くなった。
意味を、今、本当に理解した。胸に感じた安堵とか、嬉しさとか、もっと……なんて、思った事を。だから、兄の言葉が嬉しかった。だから戸惑った、驚いた。だから……ああ。
堰は切れた。そして言い出してしまったら、止まらない。兄さんの鎧の胸板を引っ掻き、叩き、責め立てて――矢継ぎ早に、言い連ねた。
全部言い切り、涙ぐんでは唇を噛む。兄さんの、その単眼を見た。

「……そうか」

そうだな、と短く言って、兄さんは僕の手に手を重ねる。
相変わらずの手套越しで、だけれど何だかとても優しく感じられて、そうも荒れた気持ちも次第に落ち着いて。そうして二人、身体を重ね合わせているのだと今更になって思い知り、はっとして、僕はまた慌ててしまう。
覆い掛かるその物々しい甲冑姿が簡素な寝台とは不似合いで、恐らくは兄さんから見た僕もその通りで、それが可笑しくはあったけど――笑う余裕なんて無い。

「では……どうして欲しい?どうしたら良いのか、教えてくれ」
「えっ……」

言われて、考えて、真っ赤になる。うろたえて、まごついて、ああ、酷く取り乱した。
答えに窮して身を捻り、逃げようとして、直ぐに捕まる。ばたばたとして暴れても、そうした手足を簡単に掴まれて、寝台に押さえ込まれる。

「言っただろう、お前の望む通りをしてみせよう。だが、口にしてくれなくては、何をすべきか分からぬ」
「兄さんは、意地悪だ……意地悪だよ……」

恨みがましく睨んでみても、兜から覗く眼光は、僕を真っ直ぐに見据えるだけだった。

「……セシル」
「……」

こんな間近で呼び掛けられて、どきんと鼓動が跳ね上がった。
息が詰まって声が出ず、返事の代わりにこくこくと頻りに首を上下するだけして――ああ、間抜けだ。馬鹿みたいだ。尚更に血が上って、顔が灼けた。
呪縛の冷気に凍えていたのが、今は熱くて熱くて胸がつかえて、咽びもした。

「お前は、どうしたい……?」
「……」

広い掌が身体を伝い、僕の鎧の胸から腹へと降りていく。長い指が下肢に絡まり、手套の爪が繋ぎ目に掛かる。
闇色に覆われ、磔にされて――僕は、僕を見詰める眼だけを見詰めていた。

「……僕、は……」

黒が僕の白へと食い掛かり、境目なんてものを溶かしていく。
そんな風に思えた。













鎧の前垂れを取り外し、下衣を解き――兄さんの足に跨って、腰を浮かせた。
下肢の付け根に手を当てて、そこから奥へ指を入れる。

「ん、……っ!」

押し入れては中を掻き、自分で自分の後孔を慣らす。
溢れ出そうな声を殺して、ぎゅっと瞼を伏せて、指を突き動かした。
中を圧す度、ぐちぐちと嫌な音がする。指を擦り付け、締め付ける音。兄さんにも、それが聴こえているのだろうか。それを、聴いているのだろうか?
兄さんは何も言わない。ただ、こんな僕を眺めている?眺めているのだろうか。

「ふぁ、あっ……」

汗が滲んで、息が荒れて、震えてしまう程に恥ずかしいのに、身体が甘く蕩けていくような、そういう感じがする。
顔を上げてはいられず、俯いて、堪えが利かずに腰が落ちた。

「ん……う……っ」

兄さんの足に乗り、足を開き、指を足して挿し入れる。くちゃくちゃとした卑しい音と、指に絡まる肉の感触と、その熱さとに感じ入って、つい喘いでは中を掻き立てる。
……それが全部、見えているのだろうか。それを言葉にして問おうとして、慌てて止めた。




頃合も分からずにいたのを、制しては止められて。
促されて指を引き抜き――その手で触れるのは躊躇われて、迷っていたら、腕を取られて抱き寄せられた。
鎧の部位が部位を打ち、がしゃがしゃと騒がしく音を立てる。
眼を合わせ、欲しいのだと揃って口にして、そんな合致に苦く笑い――下肢の衣類を剥ぎ、はだけて、身を合わせた。

「……セシル」

不意に名前を呼ばれて、ぞくりと震えた。
兄さんの低い声。他の誰でも無い、兄さんが僕を――という、それを突き付けられたようで、恐ろしくもなる。けれど、それ以上に胸が熱くて、繋がる場所が熱くて、堪らない気持ちになって、僕は兄さんに抱かれるままに身を委ねた。

「は、……あっ……ッ」

跳ねた足を手套が掴み、担ぎ上げた。下肢を高く浮かされ、兄と繋がる箇所が目に入る。
兄のものを奥に受け入れて、僕のそれはだらしなく濡れてはその滴りを垂らしている。ぎくりとして、どきりとして、臆してしまい引けた腰を、やはり手套が押さえて留めた。腰を抱かれて、兄の熱がより奥底に沈む。

「あ、うあ……あッ!!」

打ち貫くような動きに、声が上擦る。声を抑えられない。
兄さんが僕を求めてくれる。胸が苦しくて、切なくて、知らずに泣いてしまっていた。泣いて泣いて啜り上げ、苦しい、と息を切らしながら、黒い鎧に追い縋り、寄り縋る。

「兄さん……っ、兄さん……!」
「……セシル、……愛している……っ」

噛み合い、食い入る感触が、身体の内側から背へと昇る。吐き出したそれと、吐き出されたそれとが、また胸を打った。熱くて、気持ちが良くて、酷く愛しい。
……浅ましい、と恥じ入る思いも、ただ熱気を煽った。

声を上げて、声に応えて――まるで、夢中だった。

















「…………あれ」

思わず、気抜けた声を漏らして、見慣れた天井をじっと見上げた。
やおらに起き上がり、武装だけを解いてのただの着のままで寝入ってしまっていたのだと気付き、けれど、未だ夢心地で、ぼんやりと辺りを見回す。
ここは、僕らの拠点としていた砦の、その部屋の――。

首を傾げて小さく唸り、身を捩って……背にまで抜けた鈍痛に、また唸って寝台に転げた。
……腰が、痛い。局所に異物感というか、そういう感触が変に鮮明に残っている。

「……」

途端に真っ赤に灼けた顔を、直ぐに枕に埋めた。
うう。僕は唸る。兄との事が、それこそ明確に思い出された。はっ……は、恥ずかしい。嫌では無いのが、嬉しかったりするのが、また恥ずかしい。
しかし、それにしても――どうして、僕はここに居るのか。火照った頭の中を紛らすようにして、考える。

そもそも何故、何で、何だったのだろう、と考えてみれば、よく分からない出来事だった。
何故か何故だと言う間も無く、急に手を掴まれて、捕まえられて。言うだけ言って…………だけ、して。そしてそうして、寝入る間にここに帰されて?

兄さんの言っていた事を振り返り、愛している、というその言葉にまた震え上がり――その顛末をも思い返して、尚更に赤くもなり――寝癖でぐしゃぐしゃの、寝惚けた頭で考える。
兄さんはどうして、そうして。何で、どうして、そうしたのだろう。どうしたのだろう?どうして?


「兄さんは、照れ屋さんなんだな」

考え抜いた末に、そう納得した。










+++









「弟を、捕らえたそうだな」

――上出来だ、などと皇帝は言い、ゴルベーザを仰ぐ。
そして、ぐるりと辺りを見渡し、また目を戻した。

「それで、どうした。何処に居るのだ?」
「……帰した」
「……」

……恐らくは、『フレア』だろうか。
閃光と爆音と爆風とが、カオス神殿を揺るがした。



「阿呆か!!!」

吹き飛んで来た床か壁かの破片を魔力で弾き、皇帝の怒鳴り声を聴く。
物も見えぬ風塵の中、かんかんと妙に軽快な音が響いて続くが、手にした杖であの黒い甲冑を小突いてでもいるのだろうか。

「……ああ、そうか。そういう事か?」

ふと皇帝は大仰に声を高くして、それはわざとらしく殊更に、そうかそうだな、と繰り返す。また、かん、というあの音がした。

「そもそもの話だが……貴様は何だかんだで弟想いであるからな、さては私があれをこちらの側へと誘ったので、先を越されてはと危機感を覚え、血迷ったのだな」
「……惑うものか。それに、あいつは、そなたの安い誘惑に乗るような子では無い」
「それとも、あちらの側で皆々と仲睦まじく肩を並べて過ごすのを見て、妬いたか。嫉妬したか?それで、つい事を起こした、と。そうだろう?いや、らしくも無いとか短慮だとか、そのような事は言わぬ。衝動に身を任せるというのも実に混沌的で、我々らしい。だが、しかしだ。そこで何故、手離す?しょうきにもどって、怖じ気付いたか?つい、だの、思わずやってしまった、だのと自己嫌悪にでも駆られたか?馬鹿か。馬鹿なのか貴様は。歳だけを経た青二才が!」
「…………黙れ、若作りの厚化粧が」

長々と無駄口を連ねる皇帝に、短く重くゴルベーザが返す――そうした応酬が、やがて魔法の撃ち合いを交えつつも引き続いた。
そろそろ神殿の管理主たるガーランドの奴が、怒鳴り込んで来るやも知れぬ、と思い、馬鹿か阿呆かと喚き立てるのを背の側にしながら、ばらばらと瓦礫が落ちて来る中を歩く。
本当に無駄に騒がしい奴らだが、これもまた無への過程、静けさの前の嵐とでも言うものか。
そう考えれば、こうした喧騒などただ滑稽なものであり、有意義なものであるとも思える。つまりは、無の為の有だ。

『パワーをメテオに』
「いいですとも!」

何とも無しに振り向くと、いつの間にやらあの竜が現れていて、吹き抜けと化した神殿に、隕石の雨が降り注いだ。
図星を突かれて星を落とすという、馬鹿馬鹿しい状況を遠目にする。
ほう、あの竜は、口を利けたのか……軽く驚いたが、まぁ、どうでもいい事である。それにしても、騒々しい連中だ。

――騒がしいと言えば、と。あの旅人が思い浮かんだ。
調和の戦士たる者どもは、居並んでは喧々囂々とやかましいが、中でもあの小僧は特に抜きん出て目に付いた。
大騒ぎしては走り回り飛び回るのを、幾度、目にした事か。
その軽口を虚無に還してやろうと手を伸ばしても、今少しの所で逃げられる。あの細い体を掴んだならば、決して離しはしないのに。未だ一度も、手が届かない。

ああ。あの金色の言う通りだ、ゴルベーザは阿呆なのだろう。
望んで手にしたものを無に還すのでも無くただ返すなど、馬鹿げている。自分があれを捕らえたならば、決して手離しはしない。

改めて、あの旅人の事を思い浮かべる。
奴を無へと沈めるのだと考えて、いや、それよりこれはどうだと思い直す。
――あれと共に、世界の落日を眺めるのだ。やはりけたたましく喚くだろう、あの小僧のあの瞳に、虚無の訪れを見せ付けるのだ。
また騒ぐだろうか。流石のその光景には打ち震えて、泣くかも知れない。無とは一種の融合でもある。我が片腕にでもあれを埋め付ければ、その失意をより深く味わえるだろうか?
想像し、想定し、思い巡らせる。それは……ああ、とても愉しそうだ。

閃光と爆音と爆風とが、また巻き起こる。怒号が続く。
それを背にしながら、そんな混沌と破壊の後にそう至るのだろう、終末の過ごし方を思い描いた。




<終>
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