FC2ブログ

-------- --:--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. スポンサー広告

2017-01-01 20:07

■ガーゴル

■ガーゴル。落ち込んでたから誘惑してみた。

――何だろうかと、そこの黒を見た。

ガーランドはそこに居たゴルベーザを窺い、明らかに、またこれ見よがしに靴音を立てて立ち寄ろうとも振り向きもしない彼を、怪訝に思う。

神殿の開けた場所から外界を覗くゴルベーザ。その背には妙な雰囲気があり、ある種の重みがあり、しかし覇気というものが全く無い。
ただ在るだけの枯れ木のようで、物々しい黒い外套はどこか軽々としてひらめいている。
元よりこの魔人は寡黙で、それに己とこれとは気安く話をする仲でも無いが、それにしても……と、そう思わせる程に今は様子が違う。要は、変だった。おかしいと言うか。

「おい、ゴルベーザ」

何であれ、混沌の側の魔人たる者が、不調を他人に気取られるなど。(――と見せかけて実は、という事も予想はしたが、そんなふりをする意味が分からない)
ガーランドはそれを咎めるつもりでゴルベーザに声を掛けた。どうした、何を呆けておるのか。殊更に揶揄をするように、そう言って。
返って来たのは、それは意外な返答だった。

「――嫌な夢を見た」

……子供でもあるまいし。
魔人は彼方を見たままで、問われた通りに答えを呟く。いやそれが正答だとはとても思えず、猛者はただ目を見張り、ただ呆れた。
誤魔化す為の出任せにしても、これは無かろう――ふざけるな、とガーランドが魔人の背に向けて吼えるより前に、彼は漸く振り返った。
ゴルベーザは、それ以上には何も言わない。それ以外の答えなど無いという事か。
いよいよ正気を疑い、ガーランドはどこか虚ろな魔人を見詰める。そして考え、それらしい事に思い至った。ああ。前々から、気にはなっていたのだ。

「……まさか。貴様、遂に取り憑かれたか」
「何?」
「貴様の使う、ゼロムスの何とやらだ。貴様とそれとにどういう縁があるのかは知らんが……あれは、貴様にとって良いものでは無いように思える。何と言うか、あれには不穏なものを感じる」

そうだ。そんな不吉なものを持っているから、そら、そう夢見が悪くもなるのだ。
ゴルベーザは指を差してそう言うガーランドを見て返し、ゆっくりと兜を左右にした。

「『ゼロムスの結晶』、だ」
「名前などはどうでも良いわ」

――己で手離せぬのなら、ほら、此方へ寄越せ。棄てるか砕くか、どうとでもしてやる。
猛者がその手を差し向ければ、魔人は身体ごとで身を引いて。

「要らぬ世話だ、これは私が戦う為の手段だ。不吉であろうと不穏だろうと、役立つ武器で、ただの道具だ」
「そうしたものに結局は裏切られた取り憑かれたという話は、何処の世界にもごまんとあるぞ」
「私は、そうはならぬ」

手の内を見せても手を取らず、二人はじっと睨み合い――ガーランドは一先ず退き、かぶりを振って、やれやれとばかりに肩を竦めた。

「手段は選ばぬ、か?裏切りを恐れず、厭わず、顧みぬ、か。いい度胸だ」

それを呟くガーランド。
鎧が、がちゃりと鳴った。鈍色が、黒へと近付く。

「ああ、成る程。貴様というのはつまりそういう人間で、己の望みを叶える為ならば何であろうと何とやら、か」
「……」

また差し伸ばされた猛者の手が、魔人の鎧の肩当てに触れて、異形めいた白いその手指が飾りに絡められた。
兜越しに目で目を見て、視線を追い掛け、思考を探る。ゴルベーザは、ガーランドを窺う。ガーランドはそのゴルベーザを窺う。
ああ、身構えるな、ただの確認のようなものだ――要は「似たもの」だと言っているのだ。足を踏み込み身体を寄せて、鎧に鎧をかち合わせて、猛者はからからと笑った。

「貴様は、己を他と区別しておるのだろうが、所詮は同じ穴の狢よ」

カオスの元に集う、同志だものな。わしと貴様にも大差は無い。仮面を突き付けては言い切るガーランドに、ゴルベーザは動かない。
猛者はそこに垂れた腕を拾い、そして魔人を捕まえた。鎧の部位が動いて鳴いて、笑みは更に深くなる。
願い事があるのだろう?黙るゴルベーザへ、ガーランドはそう声を掛けた。

「貴様は、その為に此方に居るのだろうが」

手を取ったのとは別の手が、黒い鎧の胸を押す。

「どうせ、己やそれらを顧みる気も無いのなら……本当に、全部を捨ててしまえばいい。貴様も、人である事をやめてしまえば良いのに」
「……」

猛者の爪がゴルベーザの胸元を突いた。恐れる事など無いだろう?そう言って、笑って。
それからの幾らかの間。くつくつと、漏れる笑いの色が変わる。

「――貴様は相当、暗示に弱いと見える」

兜越しに声を吹き込んで、捻り上げた手をガーランドは手離した。
また肩を竦めて、突っ立つゴルベーザを横目にして。……ああ、どうせだったら、あともう少し踏み込んで――兜が無ければ、唇を奪うくらいはしてやったのに。きっと、もっと、さぞかし驚いてくれた事だろう。そう思うくらい、今のゴルベーザは無防備で可笑しかった。
呆然とするゴルベーザを、ガーランドはただ眺める。どうした、何を呆けておるのだ?先刻と同じように、そう言って。
やっと気が付き、ゴルベーザは猛者を睨んだ。そうして見れば、ガーランドは吹き出しそうなのを耐えているとか、尚もゴルベーザの反応というのを見張っているのだとか、そうだと分かる。

「……からかうな」
「貴様が、隙など見せるからだ」

明らかに怒気のこもった声音にも、ガーランドは怯まない。それも可笑しいとばかりに軽い口調で平然として答えた。
まぁ、そんな事より。そうも言って、魔人の睨みをかわす。

「さては貴様の事だ、どうせその悪夢とやらも、あの白黒の弟に関わるものなのだろうな?」

二人の属する混沌とは敵対関係にあるコスモスの側には、ゴルベーザの弟である騎士が居た。
この兄弟の因縁の深さというのは、傍目に見てもよく分かる。それはそうだ、身内や近しいものなどにこだわるというのは、仕方の無い事だろう。ガーランドは思った。
しかし、ゴルベーザは首を横に振る。

「違う」
「嘘を吐け」
「…………ただの、感傷だ」

私は迷いはしない。今更、道を違えるものか。
言いながらも、ゴルベーザは自分から目を逸らした。兜を俯けて、猛者の視線を避ける。
そのまま顔を上げない魔人に、構わず猛者は言って続けた。

「貴様は、多分、呪いを受けたのだ」
「……」
「ああ、言葉通りのそれでは無い、例え話だ――さて、その呪いを掛けたのは、かつて貴様を導いたという誰彼か、貴様自身か、貴様のあの弟か。それとも更に別の何かか?……」

――ばさり。視野と声とを遮るようにして、黒が広がる。
築かれた壁を前に、ガーランドは笑う。苦笑をしたのだ。己で言って、そして己で頷いた――ああ、やはり貴様もわしと似たものよ。
ゴルベーザは乱暴に外套を払い、声を背にして身を翻した。大股に歩を踏み出して、猛者が睨むのを横切り、歩いて、歩いて、足を止めて。崩れた壁から大きく突き出た断片に腰掛けた。
そうしてゴルベーザは密かに唸り、力無く背を屈めて、また兜を下向けて。

「……」

それを追って、ガーランドは項垂れる魔人の前に来る。
ああ。つい、知らずに、とでもいうのか。こう落ち込んでいる所に邪魔をしに来た、というような事になっている。
立ち寄ったのは偶然で、当然何の思惑も無かったのだが、言い合いをするうちに意地になり、意地悪い気持ちにもなり――結果、気を惹かれた。
聴け、ゴルベーザよ。倣うようにして腰を落として、瓦礫の転がる床に片膝をついては兜を覗いた。

「わしなら、貴様の呪縛を断ち切れる」

伊達にカオスとの仲介役を担っているのでは無い。ガーランドは軽く笑って、そしてふと声を潜めた。

「此処はカオスの領域だ。今や世界の殆どが我々の側の領土であり、もはや調和の力などはもう幾許も無い――輪廻の果ての果てまで、混沌が満ち満ちておる」

猛者は魔人に語り掛ける。ただ静かに。
戦場での大声とは程遠い。今はそういう場でも無いと、そう考えたのだ。雰囲気や感情などが、ガーランドの背を押した。こういう風にするべき時だと。今は、己と彼の二人に聴こえていればいい、などと。

「世界に蔓延る混沌の力で以って、お前の枷も鎖も砕いてやろう」

黒い手套を手に頂いて、密事を取り交わすかのように。
ひょんな事から魔人の色々な部分というのを見付けて、それで気が向いたのだろうか。ただの軽い関心か。話すうちに、ああ、何だろう、こうして手を引いてやりたくなった。
ガーランドは、だから言う。わしには、その力がある。兜から覗く眼光が、魔人を誘う。そら、あとはただ一つ、頷けば良いのだ。
ゴルベーザは、見据える目に目を返して、猛者のその手に手指を絡めて――彼の側へと押しやった。

「要らぬ世話だと、言ったろう。カオスの威を借る狐如きに頼る手は無い」
「……言いおるわ」

差し出された手を突き返して、ゴルベーザはいつものように固く腕を組む。
姿勢の関係でただ見下された形になり、ガーランドは苦笑をして緩くかぶりを振ると膝を立てて腰を上げた――ああ、そう来なくては、からかい甲斐も無い。
妙な駆動音を聴いて目をやれば、いつの間にやら制御システムが展開し、ガーランドを見定めるように浮いては距離を詰めて来る。
ガーランドはまた苦く笑って――全く区別が付かないが、これが迎撃システムか、或いは防衛システムとやらかと窺いながら、玉の一つを爪で小突いた。

「安心しろ、貴様らの飼い主に手を出す気は無い。これこの通り、手酷くふられてしまったからな」
「妙な事を言うな」
「……おや、脈はあるという事か?」
「何を言っているのだ、そなたは……」

馬鹿馬鹿しい、そう言い捨ててゴルベーザも立ち上がる。
浮いて呻いていた三個の玉は、手招くゴルベーザの元へと還って行った。
ああ、感傷だ。ただそれだけだ。ゴルベーザはそう言って、そして制御システムを引き連れて彼は立ち去る――その前に、ガーランドへ振り向いた。

「ガーランド」

魔人が名を呼び掛ける。例の一つきりの眼光が、猛者を捉える。
……それから妙な間があり、躊躇うような気配があり、焦れたガーランドが尋ねて返すとやっと彼は先へと続けた。
ガーランド、と彼がまた名を呼ぶ。何だ、何なのだ。ガーランドはまた尋ねる。

「――別に、本当に何でも無いのだ。……だから……ああ、心配には及ばない」
「……」

ああ。気を遣ったとかそういう、そんなつもりでは無かったのだが……。どちらかと言うと揶揄とか、ただ見かねてとか。
黒い兜が、僅かに下向く。低頭したのだと気付いて、ガーランドはそれをするこの黒を見て。回りくどくもそれなりに殊勝なその態度を見て。
――まぁ、良いか。と頷いて応えた。




<終>
スポンサーサイト
  1. FF/DFF二次創作(腐)

プロフィール

B―ポチ

Author:B―ポチ
FF/DFF月兄弟受SSなど。

検索フォーム

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。