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2017-01-01 20:38

■酒とカオスと月兄弟と

■酒とカオスと月兄弟と。

「兄さんは、お酒は飲めるの?」

唐突な質問だ。
いや、会話というのは、何らかの思惑や回りくどい策謀やらが関わる場合などはともかく、そもそもがそう出し抜けで唐突なものなのかも知れない。
ゴルベーザは、それを問い掛けて来たセシルに振り返る事はせず、聴いてはいるのだと軽く頷くだけをして。何とも無しに腕組みをしたそのままで、暮れかかる空などを眺める。
自分はセシルと、そういうただの何でも無い雑談をしているのだと、ふと意識をして――こういう気の抜けた緩い空気というのは、少しこそばゆいものだなと、そんな事を考えながら。

継ぎ接ぎの世界の片隅で、兄弟二人で話をしている。
日は暮れて、辺りは暗い。城砦から伸びた影が、二人を揃いの黒に塗り潰した。
特別な理由などは無い、偶然出くわしたのだ――というのは建前で、ゴルベーザはセシルの顔を見に来たのだ。いや、ただの様子見として。偵察だ。他意などは無い……そういう言い訳を頭でする中で、この偶然に感謝を、と言うセシルには、結局顔を向けられずに居る。

「僕は……飲まない、と言うか、飲めないから。なら、兄弟だし、兄さんもそうなのかな、ってバッツ達が」
「お前達は何と言うか、いつでも何処でも気楽だな……」

セシルから聞く、彼らの話。それは大抵、何とも気安く、間が抜けていて、呑気なものだった。敵方の者に話せる内容を、となると、そうもなるのだろうが。
あの光の戦士が食材をまな板ごとぶった切ったとか、ガーランドに話したなら奴はどんな顔をするだろうか。兜のままでも、目元などを見れば反応とか表情というのは何と無く分かるものだ――夜空の方をただ見上げて、ゴルベーザはまた考えて、ああ、いや、別に。極力そう軽く言っては続けた。

「気安さを責めているのでは無い、いつもいつでもそうした余裕があるとは、大したものだと思う」

まぁ、不謹慎だと思わなくは無いが。正直に、それを添えもした。

「兄さんは、厳しいね」
「お前達が緩いのだ」

ゴルベーザは腕を組んだ体勢のままで肩を落とし、溜め息をつく。

「――此方の側では、そうこうと気軽に気を抜こうものなら、何を言われるか、はたまた隙を突かれて何をされるか……」

そうして、つい呟いた。知らず声音も硬くなる。
カオスの陣営は良くも悪くも、緊張感に満ち満ちている。退廃的に。(皆、各々のろくでもない信念や欲望にだけは忠実なのだ)
『此方の陣営は確かに無秩序ではあるが刺々しい鋭利な部分だけが顕著で、ああ、無とはもっとしんと静かなものであるべきなのに』と暗闇の雲やエクスデスやらが、つい先日、珍しくも愚痴など言っていた。

「大変なんだね、そちらは」
「……うむ」

そういう己もまた同じように愚痴を垂れているとは、そこで気付いて。弟からの同情に、ゴルベーザは低く唸った。

「それなら、こっちへ来れば良いのに」
「そうはいかない」

ねぇ、ほら。セシルが身を乗り出して、ゴルベーザを覗き込む。
ふわりと風に舞い上がる外套、柔らかに広がる銀の髪。首を傾げた彼の角度。ゴルベーザは苦笑する。

「お前にまで、隙を狙われるとは」
「そういうつもりでは無いよ」

心外だ、とか、ショックだ、という顔をするセシルが妙に可笑しくて。ゴルベーザは己を仰ぐ弟のその頭を撫でた。
――今、私が剣を手にしていたら、お前の首は飛んでいたぞ。兄さん流の冗談っていうのは、物騒だね……。互いに間合いの内に居て、そういう砕けた話をする。

「僕はただ、兄さんと一緒に居たいだけだ」
「兄を口説くな」
「此処での僕らは兄だ弟だっていう前に敵だ、とか前にそう言ってなかったっけ?」

ああ、今は休戦中なのだ。だから、こういう事を言い合いもする訳だ。
ほら。そういう物語ってあるよね、戦い合う敵同士が互いに惹かれてやがては遂に結ばれました、っていう――ああ、いや、この場合のその結ばれたっていうのは、ええと、ああ、ほら、手を取り合って平和になりました、みたいな意味でね?言っては慌てたセシルが、また可笑しい。振り乱された髪や跳ねる飾りを、ゴルベーザは横目にする。
しかし本当に、おかしな話をするものだ。それとこれとがどうこうをして結ばれる、などという突飛な、馬鹿げた、恥ずかしい事を。
ああ。生ぬるい空気だ、妙な気分になる。ゴルベーザは、密かに呻く。この雰囲気に、酔ってしまっているのかも知れない。

「飲めない、と言うか……飲まないな」
「え?」
「酒だ」
「あ、うん」

そう言えば、セシルには初めにそれを訊かれたのだとゴルベーザは思い出し、今更ながら答える。私は酒は飲まない。もう一度、そう繰り返した。
兄弟二人での、穏やかな夜。安らかな時間。ああ、本当に、静かだ。だから、まぁいい。どうでもいいかとゴルベーザは考えて。

「酔っ払って、正気を無くすという事が……恐ろしいのだ」
「……」

それで、口を滑らせた。
――ああ。それを言い終えてから直ぐに、ゴルベーザは首を左右にする。そうして兜を横へ逸らし、何処へとも無く目線を外した。
己は何を言っているのだろう。そういう弱気な、まるで内気な、自白めいた事を弟の前で。

「いや、何でも無い。無駄口が過ぎた」

自身で言って、言い消して。似合わぬ事をした、そうも言ってはゴルベーザは身を翻す。
ばさり。二人の間に広がる、外套の黒。たゆたう漆黒。そのまま歩を踏み出すより前に、ゴルベーザはふと息をつき、背の側のセシルに声を掛けた。

「……お前は、私を酔わせる」
「兄さん」

ざり。土砂を踏み締め、足を踏み出した音。その気配。渓谷の風に浮かされたゴルベーザの外套を、セシルの手が掴んだ。
兄をそうして引き止めて。セシル――兄さん、そう呼び合って。ああ、兄さん、僕も酔ってしまっているのかも知れない……。

「僕も……どきどきしてきた……」
「セシル」

ゴルベーザの背に、セシルは寄り添う。
やはり柔らかな、場の空気。それがより淡くも冴やかに感じられて――甘い、そういう心地がした。

「僕は、怖くは無いよ。兄さんとなら」
「敵対をする身としては、それは困るな……隙を突いてやる事が出来ない」

鎧越しの重み。互いの気配。

「――真面目に告白をしているんだけど」
「此方も真面目だ。私とお前は兄弟で、敵同士で、そういう大事を見失うなど、それこそ正気では無い」
「恋は盲目、って言うでしょう」
「……お前は、エスナを使えたろう。それで、目を覚ませ」

厭うならば、背の彼を振り払うなり突き放すなりをすればいいのだ。
それをする事が出来ずに、ゴルベーザは仄かに輝く空の月を見上げて。それからただ目を閉じた。
そうして視界を閉ざしても、その輝きは消えはしない。瞼の内にも映るその色。胸を焼く、白銀の煌めき。ああ、それは本当に、綺麗だった。













そういう所を、見られていたのか。

「親睦を兼ねて、一同挙げての酒宴を張ろう。この際だ、コスモスの連中も交えてな」

騒がしいくらいが、いい。その方がきっと愉快であろう。だから、そら、全員呼び付けて来い。
――皇帝が、そう言った。宙に腰掛けて踏ん反り返り、それこそ唐突に。

親睦。この男とは、無縁にも程がある言葉である。あからさまな作為が見て取れる。どう考えても面白がっている。この野郎。
憤りを通り越して脱力すらするゴルベーザや、他にも居並ぶ混沌勢を前に、皇帝は言う。我らの側から誘い掛けてやっても奴らは罠だの何だのと疑って来るだろうが、それならそれで。皇帝の豪奢な杖が、魔宮の何処ぞを指した。

「指でも差して、こう言ってやれば良いのだ。『こういう気軽な事にいちいち躊躇をするとは小心者の根性無しめ』と」

全く無茶苦茶を言っているが、意外にもそう反論は無い。寧ろ、誰彼とも無く乗り出す気配がある。
ただ単純に、面白そうだ、と各々が考えているのだろう……カオスの側は、そういう連中ばかりなのだ。

「ああ、ゴルベーザ。貴様と弟は私の酌をするように」
「……どうして」

正直、もう心底どうでも良い気分だったが、セシルの事まで挙げられては聞き捨てならず、ゴルベーザはつい皇帝に尋ねて返す。

「自覚が無いのだな、貴様と弟は稀有な存在なのだ。混血というのが、また面白い――両手に月の民。それこそまさに、双月よ」
「うわ、親父ギャグ……」

そこでそう口を挟んだのは、クジャだったか、ケフカだったか。話を聞いていて、ゴルベーザは余計にどうでも良くなる。

「長らく疎遠であった弟と、これでこうして楽しく酒を酌み交わせるのだ、嬉しいだろう?感謝をするがいい」
「……」

で、結局、これは性根の腐った悪戯なのか実は意表外の思いやりというものなのかと考えて――ああ、ゴルベーザは直ぐに思い至る。
これは嫌がらせの為の親切なのだ。性格も悪いが、性質も悪い。




<終>
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