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2017-01-01 20:40

■ガーゴル

■ガーゴル。弟からの差し入れを猛者と食べる。

あの魔人が、箱を一つ抱えて来た。
手に持てる程度の大きさの、重箱と言うか、ランチボックスというのか、そういう。
何だそれは。ああ、これは贈り物だ。問い掛けて、そう返されて。
……何だと?つい驚いて目を見張り、ガーランドが更に問おうとした所で、ゴルベーザが先に言う。これはセシルに貰ったのだ。

「……」
「どうした?」

馬鹿を見た、という気分になる。此処へ来て此方に向けて贈り物だなどと言うから、てっきり……いや、だから拍子抜けをしたと言うか、それこそ驚いたと言うか。ガーランドは密かに唸る。

この断片だらけの継ぎ接ぎの世界で、『駒』達が持ち得ているものというのは、記憶にしろ知識にしろ実際の持ち物などにしろ、そう多くは無い。だからこそか、その希少なそれに固執する所がある。このゴルベーザにとっては、それがあの弟なのだろう――ああ、身内の事を気に掛けるというのは、まぁ、分かるのだが。ガーランドは思う。つまり結局、所詮は身内の中での内輪揉めの兄弟喧嘩ではないかと揶揄をされているという事こそを、もう少し気にすべきではないかと。
こういう奴の事をブラザーコンプレックスだか何とかというのだと、セフィロス辺りが言っていた気がする。何もかもに対し「興味が無い」と言って憚らないあの英雄にまで筒抜けであるという事実がまた、何とも。
――そんな事を此方がこう気にしてやる筋合いなど無いのだが、だがしかし、どうにもいちいち目に付くのだ。ガーランドは、それを考えて。ああ、そうだ。特にあの白粉まみれの面々が、これや己や他とを鎧だからと一括りにしたりするので、だから見くびられていては腹が立つのだ。多分。

「……ゴルベーザよ」
「何だ、どうかしたのか」

で。弟からのプレゼントとやらを抱えた、この魔人。そんな物を手に、何故此処へ来たのか。嬉しいのか?何だ、要は自慢か?この兄馬鹿が。弟大事もいい加減にしろ。
つい実際に指差しをして馬鹿だと言いかけて、ガーランドはどうにか飲み込む。ああ全く。

「それは、まさか弁当か何かか?親子や夫婦などではあるまいし……」
「? 親子や夫婦などでは無いが、身内に何か作って寄越すというのは、別段おかしな事でも無いだろう……いや、それはおかしいものなのか?」

ゴルベーザは、弁当箱?を僅かに持ち上げては首を傾げた――それが、変に可愛らしい。
大事に両手で抱えた箱が、また何とも愛らしい桃色をしていて(しかも花柄だ)、この図体での角度とかそれらがとてつもなく不思議な絵になっている。

「……おかしくは、無いが」

ガーランドは首を捻る魔人を窺い、ああ、まぁ、いい。どうでもいい。何だか此方こそ馬鹿らしくなり、で、だからそれでそれは何なのだと、問い詰めるようにもして話を切り替えた。

「ああ。正しく言うなら、これはコスモスの戦士達からの差し入れだ」
「それこそ問題だ、敵からのそんなものを受け取る奴があるか」

おいおい。この闘争の輪廻の中で、我々はあれらと戦争をしているのだ、それが差し入れ?ふざけるな。おちょくられているのではないか?
いいや、よくよく考えてみれば、あの白黒騎士とて弟だという前に敵方だろう!

「氷菓子らしい。まだ開けて見てはいないが」

魔人は構わず話し続ける。

「あの旅人が、適当な食材とブリザドの応用とで作ってくれた、という事らしい。器用なものだ、それに黒魔法で菓子をこしらえようだなんて、私には思い付きもしない」

律儀に説明をしてくれるゴルベーザが、また馬鹿らしい。
それはな、そう感心をするべき所では無くて、呑気だとか腑抜けているとか阿呆だと言うべきなのだ――だが、そんな余裕があるというのは、素直に評価をしてやりたい。ガーランドがどう言っても、ゴルベーザは勝手に納得をしては頷くばかりで。(混沌の側というのはこんな調子で一方的な奴ばかりだ)
助言者の顔で暗躍をしているうちに、弟相手のみならず、無差別に保護者癖でも付いたのだろうか。呆れてしまったガーランドを余所に、ゴルベーザは彼らはだから云々と呟いては肯定をする。貴様は奴等の父親か、母親か?
――いや、そんな事より。そう話を締めたのは、ゴルベーザだった。
うん?何だ?……軽く唸ったガーランドに、彼はその花柄で桃色の箱を突き出す。

「私だけでは、食べ切れない」
「……」
「冷たいものを一度に多量に摂るというのは、身体に悪い。腹を冷やすからな。しかし、これはあまり保存の効くものでも無い」
「……」
「箱には南極の風の欠片が入っているらしい、が、何しろ最低限の処置なので時間的な限度がある。だから、そなたに手伝って欲しい」

つまりは、食え。そう言うのだ。ほら、鍛練の前後などに甘味を摂取するのは良い事だぞ、確か。甘言なのか親切なのか、そんな風に添えて。つい先程、腹を冷やすから良くないと言ったばかりではないか。
しかし正直、少し小腹が空いてはいた。何か口にしたい、とは思う。甘いものなどがあるならば、それは有り難い、が。

「ああ。勿論、私も食べるぞ」

他の誰かが作ったにせよ、これは弟から私への贈り物だ、そなたに独り占めにはされたく無い。ゴルベーザが言った。
別にそんなつもりは無い。それより、気付けばもう食べるものだと決め付けられている……そう言えば、どういう経緯でゴルベーザはあの白黒騎士からこれを受け取ったのだろう、お裾分け、か?我らと奴らが出くわす場所と言えば戦場でしか無い、そういう時と場所で、菓子など贈り合うのか?好敵手ゆえの礼儀だとでもいうのか、馬鹿な。ああ、いや、確かにそういう事は有り得ない事では無いのだが、騙り合い騙し合いよりかは潔いものだが、しかし、何と言うか駄目では無いか、それは色々と。

「ガーランド」
「む」
「いざという時に全力を注ぐ為の、ただひと時の休息だ。つまりはこれも結局は、手段の一つの段階なのだ」

――悩んでいたのを、見抜かれたか。不意にそうしてゴルベーザが言う。気張る為に、気を抜くのだ。時にはな。兜の内で、彼は笑った。
軽い口調。そういう話し方をする彼というのは初めてで、意外だとか新鮮だとかと考えて――そういうガーランドの前を横切り、ゴルベーザはいつかに崩れて砕けた壁のその出っ張りに腰掛ける。
そこで食べようという事らしい。それに倣って座るのならば、位置的にその隣しか無い。前で突っ立って物を食べるのも、地べたに座るのも変な話だ。

「……」

何と無く、うむ、と声に出してから頷いて、ガーランドも横に腰を下ろした。
とは言え、お互い鎧や兜の横幅があるので、実際にはそう近くも無いのだが。だが、まぁ、隣は隣だ。素手が届く位置に並んだのは、これまた初めての事だった。
開けられた箱から、ひやりと冷気が来る。ゴルベーザはその箱ごと差し出して来た。「選べ」、という事だ。選べる程に数があるというのが、また。全部を食い切るまで、こうして並んでいる事になるのか。
他の連中も呼んだらどうなのだ、ジェクトとか、奴なら平気で全部平らげそうだ。そう考えて、混沌の側の面々が揃って並んで菓子を食らうというのは――とその光景を想像して、ガーランドは考えるのをやめた。
適当に一つを選び――棒付きの、いわゆるアイスキャンデーという奴だ――手にする。女子供も居るあちら側の顔触れに合わせてか、小振りで、淡い爽やかな色をしている。ガーランドは思う。自分には、とても似つかわしく無い。

「そこが、外れるのだな……」
「うん?」
「兜を取らねば、食べられないかと」

ガーランドが仮面の口元の部分を取り外していると、横のゴルベーザが覗き込むようにして来た。

「何だ、わしの顔を見てみたかったか?」
「いや、別に」
「……はっきり言うな」
「ああ、しかし、それを見る事が出来るかも知れないとなれば、興味以前に期待をしてしまうだろう」
「結局、見たいのか」

この魔人も、他人(弟以外)になど関心が無いのかと思っていた。彼のそんな機微に触れ、それこそ気を惹かれる中で、そうまじまじと見詰められて。ガーランドは、少し気恥ずかしくなる。

「ただ少し気になった、というだけだ」
「ああ、まぁ、どうでもいいがな」

目線を逃がせば、ゴルベーザも余所を向いて、手を上げて。そうしてその兜を脱いだ。
脇に置かれた兜を見て、その顔を見て、初めて見たという訳でも無いが、ガーランドはつい目を見張る。
先ず目に付くのは銀色の髪。浅黒い肌。素顔を晒して軽く息をついた、その表情はあの弟と似ているような似ていないような。
別に意外だとかという事は無く、分厚い鎧に似合いの厳めしい顔付きなのだが、何しろゴルベーザというこの男は大抵いつも鎧姿であるので、黒い甲冑のこれがこいつの顔形なのであって中身などというものは無いのだ、とそういう錯覚をしてしまったりする。勿論、そうでは無いとは分かっているし、そもそも魔人だ何だとは言われつつもこの男はただの人間だ、つまりは単にその生身が珍しいのだ、だから注視をしてしまう。

「……」

だから――氷菓子を口に咥える魔人の姿を、ガーランドは眺めてみたりする。
己の方も傍からすればそう見えるのだろうが……ガーランドから見て、そういう菓子を口にするゴルベーザというのは妙な光景だった。何と言うか不釣り合いで、面白い。
ガーランドも氷菓子を口にした。素朴に甘い、簡単に作ったというにしては、悪くは無い味だ。
外気や口元の熱で溶けていく棒菓子の表面を、垂れてしまうより前にゴルベーザは舐めて舌で掬う。暫くは浅く口にして味わって、唇を汚したものも舐め取り、それから深くへ棒を含んだ。
ちらちらと覗く、舌や口内の赤。唇を濡らす果汁。ゴルベーザは合間にふと息をして鼻を鳴らして――軸に歯を立てて、それを圧し折った。
ああ。口に入れた飴を最後まで舐めずに、途中で噛んで噛み砕いてしまうとか、あるよな。うん。そういう事を思うガーランドが見ている横で、ゴルベーザは舐めて味わうという事にはもう飽きたとばかりに、氷を噛んで砕いてぼりぼりと喰らう。

「情緒だとかの無い奴だな……貴様は」
「何か言ったか?」
「いいや」

兎に角、自分もそれを口にして。氷菓子は冷たく、甘い。大分溶けて来てはいたが、このゴルベーザのような食べ方をしてしまうのも勿体無いと思えて、ガーランドはそう柔らかくなった部分を口先で掻き込んでは啜るようにして食う。
二本目をまたばりばりと処理しながら(仏頂面だが問えばちゃんと「美味い」と言うから、機嫌を顔に出さない奴なのだという事だろう)、ゴルベーザがぽつりと言った。

「そなたは阿呆だ何だと言っていたが、親しい者と料理などをしてこしらえた菓子を摘むというそういう事こそが、心を豊かにするのだと私は思う。私には遠いものだが、だから、羨望もあるのかも知れない」
「……」

――ああ、確かに、こいつの食事風景は殺伐としている。ガーランドは、そうして語る魔人を見詰める。
相変わらずの物々しい横顔。そういう表情で菓子を食らう彼。

「憧れがあるのなら、その形だけでもしてみたらどうだ?適当な誰かを誘って。それで気が済むかも知れんぞ」
「だから、そうしている」
「……何?」
「今、そなたと此処でこうして」

ガーランドは、それを聞いて。つい、自分も氷菓子を圧し折った。

「家族や友、身内か仲間か、どれに近いのだろうな。この感じは」
「……」

ああ、つまり、適当に選んだ相手がこのわしだという事か。
そう片付けてガーランドは氷を噛んで、しかし妙な気分で、言うだけを言って菓子を食べているゴルベーザを見ている。
手持ち無沙汰になり、次の一つを箱から取り出そうとして――ちょうど同じように手を出して来た彼と、かち合った。
見慣れた例の鉤爪付きの手套では無く、ゴルベーザは素手だった。当たり前だが、手も浅黒い。ガーランドの青白い肌とは全くの逆だ。
そう言えば、食べ始めるより前にゴルベーザは律儀に小手まで外していた。座った横に、兜と一緒に小手や手套の黒と黄色が並んでいる。
触れ合った手を、直ぐに引っ込めて。ああ、すまない。ゴルベーザからそう言われて、ガーランドも同じ事を言い、ややあってから互いに順に棒菓子を取り出した。



「ご馳走様」

空いた箱と、底の幾つかの棒。
しっかりと手を合わせて礼をして、ゴルベーザが言った。そこからじろりと睨まれて、ガーランドも適当に倣う。

「貴様は、どうにも浮世離れをしている癖に、こういう所で変に所帯染みているな……」
「セシルにも、そんな事を言われたな」

いちいち律儀な奴だ。本当に、保護者か親か、貴様は。そう言うガーランドに、ゴルベーザは箱を片付けながらただ答える。

「私が、まるで父親のようだと言うのだ。そう父親役とか監督役とかというのなら、我々の側でそのように呼ぶに相応しいのはガーランド、そなたの方だと、私はそう思ったのでセシルにもそんな風に返したのだが」

――今度は、では私は母親にあたるのか、と言われた。
聞きながら、ガーランドは思う。変な会話だ、その発想とか流れとか。この兄弟は、何と言うか妙な所が多い。体躯的には揃って厳つい方なのに、印象がふわふわとしている。尖った時には、それはもう鋭い奴らなのだが。異種族ゆえの事なのだろうか、これは。

「それでは、ガーランドと私が夫婦だという事になってしまうな。と言ったら、セシルに怒られてしまった……」
「……」

そういう突飛な言動を、ガーランドとしては面白いとも思ってはいた。しかし、唐突過ぎて反応に困るという事がある。
ゴルベーザはその鎧の膝に花柄で桃色の箱を乗せて、首を傾げた。
いや、首を捻りたいのは此方の方だ。そこで口頭に挙げたのが、夫婦、とは。どんな判断だ。

「馬鹿を言うな、と言われたのだ。あいつにしては、凄い剣幕で」
「……それは、言われるだろうな」
「そなたは、あいつに随分と嫌われているのだな」
「いや、わしが嫌われている、と言うか、それは……」

二人きりの家族だという話だから、その弟なりの嫉妬とか独占欲とか、ああ、いや、まぁいいか。

「貴様は……天然だな」
「?」

ガーランドが呟くと、ゴルベーザはまた首を傾げた。
ああ。それにしても。

「今日の貴様は上機嫌だな、いつになく饒舌だ」
「そうか?……美味かったからな、甘味というのも偶にはいい。彼らには改めて礼を言おう」

彼ら、とは建前で、弟からの差し入れが嬉しかったのだろう、どうせ。ガーランドはそれは言わずに、魔人の横顔などを眺める。ああ、馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいが――可愛らしいじゃないか。苦笑をして、そう考えた。
これを、セシルに返さねばならないしな。ゴルベーザは箱を持ち上げて示す。

「私とそなたの二人で有り難く頂いたと、セシルにはそう伝えよう」
「貴様は、わしをあの弟に殺させたいのか……」

何だ、そんなにもそなた達は険悪なのか。ああ、我らと彼らとは、結局は敵同士だからな。そういう敵対心があるくらいが、それらしいか――また勝手に、ゴルベーザは納得をした。

闘争の輪廻だとは、己で言ったが。ガーランドは唸る。
……今後はさぞ苛烈な事になるだろうと、この魔人の弟との激戦を覚悟した。




<終>
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