2017-01-01 20:44

■ガーゴル。きっかけは露骨に結果は純情に。※18禁

■ガーゴル。※18禁
「発情期、か?……獣か、月の民とやらは」

宇宙人だか何だか知らないが。『月の民』というのは、相当に不可思議な生き物であるらしい。それはもう、想像以上に。

「違う。恐らくは……多分、混血ゆえの事なのだろう、と思う」

ああ全く、こんな時にまで、こいつは生真面目だ。此方の呟きをしっかり聞き付けて、この魔人は己のこういう不調を指しては、いちいち馬鹿丁寧に注釈を添えてああだこうだと言い募る。
月の満ち欠けに身体の調子(などという言い方をしているが要は本能的な衝動の事だろう)が左右されるのだとか。満月の日には、特に。とか。
偉ぶっては気丈とも言えるそういう態度を強く示して、大丈夫だ問題無いと言いたいのだろうが。
無理をしているのだと直ぐに知れた。声が震えている、胸を張る事も出来ていないし、足腰にも力が無い。へたり込んだままで、自力ではとても立ち上がれそうにも無い。相当に追い詰められているのだろう、と容易に見て取れた。



話を戻すと。そこを通り掛かったゴルベーザが己の真ん前で躓きかけたのを、つい助けた。手を差し出し、魔人の身体を腕で支える。
正直、重い。重かった。咄嗟の事だけに余計に、堪えも利かずに思わず呻いてしまいそうになる。
こいつの鎧が魔法仕掛けなのか本人の力によるものなのかは知らないが、この魔人は大抵いつも幾らかの浮力を纏っていて、見た目の重厚さに反してふわりふわりと身軽に飛び回りもしていたが。普段ならば。
だから、この重みで奴の不調というものを悟る。腕に掛かる、重量。見た目通りの圧力。根本的に力を使えていないのか、何らかの制御などが出来ていないのか、やはりそれは分からない。兎に角、もう身体ごとで抱えて捕まえた。
それをした時の、騒ぎと言うか、奴の反応というのはそれは大袈裟なものだった。
喉元に刃なりを突き付けられても、この男はきっとこうは驚かない。動じもしないのだろう、とそう考えていた。頑丈そうな印象からの勝手な想像だが。
此方の手が触れたと気付いたらしいその途端に、肩当てがびくりと跳ねた。悲鳴のように喘ぎすらして。更によろめき、もがくようにもして逃げようとする。
だが、緩慢に動きじたばたとするだけで、ろくに抵抗出来ていない。そして、遂にはこう言い訳を始めたのだ。

――ただの、よくある体調不良だ。大した事では無い。

よくあるのか、こんな事が。
此方を突っぱねようとする手を手でいなして、馬鹿を言うなとつい返した。

魔人の鎧の黒が、小刻みにぶれる。震えているのだ。
ゴルベーザは、此方と目を合わせない。壁に凭れて、時折呻いて。己の醜態を恥じているのか、顔を上げる事すら辛いのか。

「ゴルベーザ」

肩当てを掴み、声を掛けた。
気張るのも羞恥も勝手だ、だが、そもそもこういう状態の奴を相手に何かを言ってやろうしてしまおうという、そういうつもりが此方には少しも無いのだ。どこぞの暴君ではあるまいし、そんな悪趣味は無い。だのに抵抗などをされて暴れられては、心外だ。
説得でもするかのように、此方も言い訳を試みる。

「こんな所で倒れられても困る。……何だか知らんが具合が悪いのなら、醜態ついでだ、頼ってしまえ。別に他言などもしない」
「……」

そら、と奴の面前に手を差し出して言った。きちんと意識があるのかの確認を兼ねて、目元の辺りで手をひらめかせもする。
風邪でも引いたのだろうか。こう見えて、こいつはただの人間だしな。そういう安易な想像をする。そうでは無いとは、その後に分かった。
ゆっくりと、それは酷く緩慢に黒い兜が振り返った。一度は肩を落として深く息をして(兜のままだが仕草で分かる)、改めてゴルベーザは顔を上げる。
そうして此方の首をいきなり掴み、自らの側へ引き寄せる。
何だ、とは思ったが相手が病人?となると逆らって返す気にもなれず、特に振り払うような事もせずに居ると、そのまま勢い任せに向きと位置を反転させられ、通路の奥へと押し込まれた。小手や肩当てやらが壁を擦り、或いは打つ。お互い、この図体だ。どすんとかばたばたと、やけに大きく音もした。

「ゴルベーザ?」

――おい。何だ。
暗がりで、奴の鎧がより黒ずんで見える。ただ一点、そこでやけに強く閃く単眼。絡み付くような手。その目と手と、黒。後ろ暗い気配。
合点がいった。ああ確かに、界隈ではよくある話ではある。そういう方面の術や何やらにはてんで疎い自分でも、何と無く気が付いた。
欲情をしている。そういうものの、臭いがした。

「……ガーランド」

余裕の無い声だ。らしくも無い。こんな時に、そう言ってやるのも酷か。
ああ、まぁ、妖精やら妖魔らの悪戯とか誘惑とか、よく聞く話だ。そういうものに陥るというのは、ありがちな出来事ではある。
直ぐそこにある魔人の兜を、見詰める。そう、よくある話だ、とは思うが――

(どうしてこうなった)

何で、とか、どうして、とも思う。
鎧を掴む奴の鉤爪。魔法や薬品などの臭気やらは感じない、とは言え自然な生理現象だとも言い難い。どう見たって様子がおかしい。
引っ掛けられた手が震えているのを見て思う。だから、恐らくは何か特殊な何やらでそういう不自然でおかしな状態に陥っているのだろう、と考えて。
状況と状態と己のこういう解釈などを頭の中で照らし合わせる。さて、魔物や魔道の者などは、邪道でもって生物の生気や性的な精気やそういうものを糧にして自身を維持したりより強い力を発揮したりをする訳だが――では、異常を来たしているというなら、そういうものを足して与えてやれば良いのか?わしが?ああ、頼ってくれていい、とは確かにさっき自分からそう言ったのだが。
ただ単純に、衝動を耐えるのは辛い、という事もある。常時ならば兎も角、正気を失くした状態では余計に抑えも利かず、それではそれこそ心などを病む事になるやも知れない。そうと思えば結構な緊急事態である。

(いや、だが、しかしだ)

ゴルベーザの手が、首を抱く。明滅をする眼光。覆いかぶさる黒。兜越しの、荒い息遣い。
自分が、抱かれる側なのか?――間抜けな話だが、ここまで来てもまだ頭の中で他人事のように考えている。ゴルベーザの手套の爪が、此方の鎧の腰部を掻いた。それらをただ眺めている。甲冑の留め具を探す奴の動作などが、何とも不思議で、何だか現実味が無い。
いや、ほら、戦士としてのこいつこそを第一に評価しているからだ。ああ。何故だか自分で自分に言い訳を始める。
闘争の中でのこいつはそれは荒々しく苛烈な男だ(岩盤を魔法で引き剥がしてぶん投げているのを見た時には正直驚いた)、だが、普段の様子は寧ろ穏やかですらあるもので、お堅いと言うかいちいち生真面目な奴だったりして、実は月の民なのだというどこぞのお伽話のような身の上やそこらでふわふわ浮かんでいる姿などは、ああ、何と言うか少しばかり可愛らしくて――――
……欲情をしたものの気配というのには、意味や意図があからさまなだけに、その周囲すらも煽る作用があると思う。ああ。白々しい言い訳だ。
かち合う鎧。縋り付く手――ガーランド。また一度、名前を呼ばれた。
寄り掛かられて、重い。奴の重みだ。触れた甲冑の硬い感触。その奥の、乱れた呼吸。とっくに出来上がっているのだろう、この鎧の下の身体。
いつもいつでも鎧姿のこいつの生身をどうこうなどとは、今の今まで考えた事も無かった。だから今、驚いていた。魂消ている。
ああそうか、不可思議で非現実的であるからこそ、夢想をするのだ。……こいつとそういう事をした時に、こいつがどういう声を出して、この身体がどのように応じてくれるのか、興味があるか無いかと言えば――隙に付け込むとかそういう事とは別の次元のただ単純な関心として――正直、まぁ、ある。

胸倉を掴んだ手が、ふと緩む。ゴルベーザの足が崩れた。
滑るように落ちて行く手套。床に広がる厚めのマント。今度は受け止めてやる間も無く、腰を抜かしたというようにしてゴルベーザは其処にへたり込んだ。
……。
……。
……。
……。
…………私は、混ざり者だから。己で暗黒を選んだという事もある。純粋なものとは違うのだろう。だから多分、少し過剰に、影響を受けるのだ。月の。
幾らかの時を置いて、ゴルベーザはこの状態というのを語り始めた。ぼそぼそと。月の満ち欠けの具合で、調子が、その、悪くなる。だから。
――だから、何だ?そこで息を乱して咽たのを、やれやれ、と言って此方も屈んでやって腕で支えた。

「……こんな状態で外を出歩くな」
「引き止めたのは、そなただ……!」

普段は苛烈であったり静かであったりする奴の、この動揺。無軌道な行動。馬鹿らしくも可笑しくもあり、ああ、どうにも気が抜けて、気を惹かれる。

「そんなざまで、このわしを抱くと?」
「……」

苦しげに上下する奴の肩当て。それを見下ろし、笑って、からかうような言葉を投げる。
睨んで来たが、こんな様子では怖くも無い。寧ろ此方から顔を突き付けてやる。
僅かに怯んで身を引いたのを、腕を回して引き寄せた。奴の鎧に手を置いて、腹とか足とか、その辺りを適当になぞる。わざとらしく。
ああやっぱり、と言うか、それだけで感じるのだろうか、ゴルベーザは過敏に身を竦ませて、またもがいた。

「触るな……っ」
「いきなり押し倒そうとなどしておいて、言える台詞か」
「好きにしろ、とはそなたが言ったのだろう」
「そこまでは言っていない」
「……分かった、いいから、離してくれ……!」
「身体が疼くが、身を任せるのは嫌だと?なら、勝手にしろ。この装備を解くのくらいは手伝ってやるから、あとは自分で処理をすればいい」

その装備を適当に脱いで捨てて、一人で、好きなように。存分に。
と言ってやれば、ゴルベーザは余計に目を怒らせて――声を潜めた。

「……誰かに、いいようにされるのは……嫌だ」
「面倒な奴だ。四の五の言っている場合か。要は、吐き出せれば良いのだろう?」

そういう情けない状態で我が儘を言うな、馬鹿が。そう少し呆れもしたが、それなりに真面目になって奴を見詰める。
――頼れ、とは自分が言った。だから。と、思う。
奴の兜の角を掴む。何とも無しに指先でそこを撫でたりもして、答えを待った。

「……ああ、どうでもいい。ならば、もう、お願いする」

此方を見上げていた目線が、横へと逃げた。どうでもいい、とまた一度ゴルベーザは言う。

「捨て鉢だな、可愛げの無い」
「うるさい」
「貴様がどうでもいいと言うのなら、此方としても、まぁどうでもいいが……」
「そなたなら、いい」
「……そうも好かれているとは、思わなんだ」
「そなたなら、他の奴よりかはまだましだ、という、それだけだ……」

……そこを掴むな。ゴルベーザは言って、兜を持つ手を振りほどき、その手を手で掴んだ。
手套の革の、厚みのある感触。指に指が絡む。乞うようにもして。

「ゴルベーザ」
「……ああ。全て、そなたに任せる。この身体など、どう使ってくれてもいい。だから…………助けてくれ」

――ガーランド。
熱っぽい声。手に力が篭る。……どきりとした。

「っと――おい、本当にこんな所で?せめて、貴様の寝床にとか」
「待てない」
「……」

ゴルベーザは背を丸くして此方の鎧の胸に寄り掛かり、もう片手をどこぞへ向けた。

「防衛システムが、見張っている……。もし誰彼が来ても、迎撃システムが迎え撃ってくれる」

防衛システム……迎撃システム。あの玉っころか。戦場で飛び交う、機械仕掛けの球体を思い浮かべた。
いつの間に、それを飛ばしたのだろう。全く気付かなかった。流石と言うか、変に抜け目の無い奴だ。足腰も立たない癖に。

「待て、その誰彼に突破をされたら?」
「お互い、恥をかくだけだ」
「巻き込むな」

無茶苦茶を言う。恐らくは酔っ払っているような状態なのだろうが、それとも、元よりこういう奴なのか、こいつは。
横柄な態度には辟易し、せがむようにしてマントを掴んで引っ張って来たのには少し胸を打たれる。
ああ。ゴルベーザが呻いた。ゴルベーザは項垂れている。

「……どうしたらいい?」
「? どうしたら、とは?」
「此方からも、そなたに触れたりをした方が、良いのか」
「何だ。これだけ露骨に誘っておいて、まさか、初めてなのか?」
「……」

尋ねてみたが、ゴルベーザは黙り込む。ああ、そうか、記憶が無いのか。それとも言いたくは無いのだろうか。下の話をしたくも無いだろうし。
ならば、どちらにせよ訊いても無駄か。まぁ別に、何でもいい。と簡素に片付けた。それに。

「どうこうをされるまでも、無い」
「……」
「欲しがったのは、そっちだろう。煽っておいて、今更、照れるな」
「……そなたこそ」

道端の床で膝を突き合わせて、兜の角をぶつけ合い、そんなやり取りをして。
負担に見えるこの馬鹿でかい肩当てやらを外してやろうかと、声を掛けてから手をやると、要らぬ世話だ、このままでいい、と俯くまま口で拒まれた。
ゴルベーザは身震いをして、また喘いで。手では下半身の装備を解く。鎧の前垂れやらが、外れて落ちる。此方も手を出して、下衣の布などを引き抜いた。
触れてやる事に、特別の抵抗は無かった。此方にも、あちらにも。ただ、奴の手足がびくりと反応する。息を呑んだ、そういう音。

「うっ……」

此方の肩辺りに面を伏せて、ゴルベーザはやはり此方のマントを握り込む。
勃ち上がっている性器。震える身体。熱い手触りと、より上擦る声。指を滑らす、水音。
姿勢を変え、壁際へ押し込むようにして乗り掛かり、奴の兜の目元と目を合わせて。身体の奥に、性器を押し付ける。先端から内側へと入る感触。くぐもる嬌声。

「あっ……ガーランド……!」
「ゴルベーザ……っ」

――ああ。焚き付けられた。見て見ぬふりも出来たのだ、なのに、こうして深くへ触れて互いへ声など掛け合っている。
ただ、熱い。締まる内側が気持ちがいい。奴の中に自分を埋める、その感覚とか感触とか。奴の声だとか。
あっ、ん、っ――ゴルベーザのその声。その音色。跳ねる手足。乗り上がる己のその下の身体。締め付けて来る内部。そういう中の、厚さや熱さ。肉を打つ音。
声を聴いて身体に触れて、味わう為に大きく動いた。
殆ど鎧を着たままで、下肢だけ繋げる。情緒も無い、直情的なだけのだらしの無い話だ。だが、いい。好かった。腰から沁みる露骨な快楽。心地好くて、ただ単純に先を乞い掛け、出し入れをして突き上げた。
深く影の落ちた突き当たり。角っこの狭苦しい中で互いを押しやり、がつがつと鎧を打ち合い声を出し合って、ゴルベーザの内側を己で舐める。強く擦り付けて、竦む身体に身体を重ねて。

「あ、……ああッ…………!」

甘い悲鳴。かすれて行くその音を聴きながら、中で射精し、奴が吐き出したのも見た。鎧の金臭いそれに混ざる、生々しい精液の臭気。内側に広がる水気。
握り込まれたマントが突っ張る。抱えて浮いた奴の靴先が、宙を掻いた。

「っ……う……」

余韻に震える、奴の声。嗚咽のようだ。本当に泣いているのかも知れない。
とは言え慰めてやるというのも何か違う気がする。それにお互い兜のままだ、だから、口付けてやる代わりに首を抱いた。硬い音を立てて角が当たる。それに続く、明け透けな要求。突っ張るマント。もっと、して欲しい――ガーランド。
ああ。とか、良かろう、とか。そう答えたような覚えはある。熱にけぶる感覚。掴んだ足も熱くて、汗が染みた。





何と無く、今更、思う。
硬い甲冑の下の身体は、ちゃんと温かかった。


そういう実感をして、途端に光景が現実味を帯びる。
普段は見えていなかったこの温かなものが、何と無く、好ましく思えた。







ガーランド。ああ……ガー、ランド。
言葉らしい言葉などは無く、ただ此方の名前を連呼されて、抱き締められる。荒い呼吸。苦しそうで、ああ、兜を取ってやれば良かった。もう今更だが。
射精をした奴の性器を、更に扱いた。全部、出してしまえ。そんな事を言って、手で直に煽る。

「ああ……っあ……」

甘ったるい声だ。尚も擦り付けた手の中で、粘着く音を立てて白濁が零れる。もう、いい。もうやめろ、だめだ……ああ。そういう声。
引き締まる内側で、此方も達した。射精感に肌が粟立ち、震えが走る。ゴルベーザのそれも、また精液を射ち出していた。
――ああ。ゴルベーザ。自分からも名を呼び掛けた。
穴から溢れて垂れ落ちる精液、手離しても繋がる糸。互いの余情。強く背を抱かれて、鎧が軋んだ。

汗や、精液や。そんな臭いばかりがする。
身体を引くと、マントを掴まれていて、だからそのままさして動かずに一息、二息と休んで、そこで丸まっている背を撫でて。此方の胸に凭れたゴルベーザに話し掛けた。

「落ち着いたか?」

それに対しての答えは無くて、酷く長い間があって、開口一番、完全に腰が抜けた、などと言うのだ。
飛べばいい。まだ、集中が出来ない。おい、寝てしまうな、こんな所で。……まだ中に、そなたのものがあるように思えて、妙な感じだ……。そういう事を口に出して言うな……。

「……」

すまない。有難う。気が抜けたか、不意にそんな事を言われて――頼れと言ったのは自分だし引き止めたのも自分だから礼などは別に、ああ、うむ。幾度か唸り、改めては咳をして、俯いている奴に声を掛ける。

「……こういう事がよくある、というのなら…………我慢が利かんようならば、だが。次にも、わしを頼ればいい」
「……ああ、……」

返って来たのは、生欠伸。ちゃんと聴こえているのか怪しい。
まだ、酔っ払っているのかも知れない。そもそも本当に、意識があったのだろうか?それで寝こけて起きたら、何も覚えてない、とか言いそうだ。おいおい――

「そうだ、ああ、そう言えば……」

おい、こら、起きろ。馬鹿者。せめて、その、処理くらいはしておけと。
ゴルベーザの肩や背を揺さぶって、何でもいい、何かこいつの気を引ける話題をと考えて、ふと思い立つ。

「貴様がこうだという事は……あの白黒騎士も、そうなのか」
「……何?」
「兄弟なのだろう?なら、同じように、月夜にはこう苦しんでいたのやも知れん」
「……」
「貴様のように、近場の誰かに縋って泣いていたのかもな、適当な誰かを寝屋に引っ張り込んで」
「……」

ああ。選択肢というのは得てして、選ぶべきを誤ってからそうと気付くものだ。
黒い炎が、じわりと立ち昇って見えた。ここはただ薄暗い場所ではあるが、見違いなどでは無しに。そしてそれを裏付ける明確な敵意。殺気、と言うべきか。
ああ、こいつはあの弟の兄なのだ。身内の下の話を笑える奴というのはそう居ない。しまった、と思ってからでは遅かった。致命的に。
いやいや待て貴様もう殆ど寝ていただろう、ああだいじょうぶだしょうきにもどった、というそういうアレか?
下品だ、破廉恥だ、ふざけるな――何をどう、どの順に言われたのかは思い出せない。例の黒いドラゴンが出て来たのは覚えている。あとは降り注ぐ星の屑とか。屋内で。馬鹿な。





そういう顛末。本当に馬鹿げた話である。


だが、しかし、そういう末の――いや最中のか、顕著な破損にはただ可笑しくなる。ポーションでもケアルでも直せない損傷。
手で摘み上げて、つい苦笑をする。己のマントには、奴の鉤爪が引っ掛けたその傷痕が付いていた。




<続>
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