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2017-01-01 20:48

■続きガーゴル

■続きガーゴル。
「――忘れろ」

先ず第一声、ゴルベーザはそう言った。
凄みのある声で、脅すような勢いで。


”あれ”以来の事だ――あれから次に二人きりで出会った時、こっちをあの一つ目で睨むなり(直ぐさま逃げ出そうとした気配があったのはこの際触れないでおく)、奴は色々と言い出した。ただの言い訳のような、言い損ないの迷言だとでもいうような。
……どうかしていたのだ。全く正気では無かった。酷く混乱をしていて、取り乱していて、ああ、完全に錯乱していたのだ――本当に、だから……犬にでも噛まれたと思って。

「噛み付いたのは、どちらかというなら、此方の方だが……」

――状況と言うか、ほら、状態的に。
山ほど投げ付けられた中からそれを拾って一つ返せば、怯んだような、怒ったような、よく分からない様子で奴は呻いた。
そういう表情(此方と同じく兜姿なので雰囲気だとかの話だ)をして突っ立っているゴルベーザが何と言うか面白くて、暫くそれを眺めていたが、ずっとそうしているのも変な話で、だから適当にそれらしく笑って肩など竦めてみる――あちらも相当、居た堪れない思いで居るだろうし、などと考えたりをしながら。

「どうかしていたにしても、正気では無かったにしても、錯乱をしていたにしても、だ。……だから、何だ?」

先程からの奴の言葉を全部受け止めて、軽く流した。摘んで放り捨てるようにして、だからどうした、それが何だ。そう言って。
言い負かせるとか言いくるめるつもりでも無いが、逃げ腰の相手は見逃すよりも追い立てて殴りたくもなると言うか、つい、そういう言い方をしていた。
まぁ、いきなり逃げを打つよりかは健全じゃないか?それに、攻撃をし合うくらいが、混沌の側らしいというものだ。そんな事を思い、構わずに奴をなじる。

「…………」

ゴルベーザは此方を見て、あの単眼を頻りに瞬かせて――その厳つい肩当てが、ずいと前に来た。ばさりとマントが大きくそこで舞い広がる。ゴルベーザが踵を返し、身を翻したのだ。
――おい、だから、こら、逃げるな。ゴルベーザの鎧の首周りを掴み、引き留める。
大股で足を踏み出した所を、そう掴んで止めたのだ。がくりと上体が引っ掛かり、奴の身体が後ろへ仰け反る。
それを咄嗟に受け止めて――ああ。よく転ぶ奴だ。いつも、ああしてふわふわと浮かんで、ろくに地に足を付けずに魔法に頼っているからだ。こう言ってやれば怒るかと思ったが、それらしい様子は無い。ただ、引き剥がすというような振り払うというような、そんな具合で押し退けられた。

「……っ」

何かを言いかけたか、やりかけたかをして、ゴルベーザは結局は何もしない。
何だその、煮え切らない態度は……。窺う為に近付くと、ゴルベーザは跳ね退くように後ずさる。
一進一退、などと言えばそれらしくも聞こえるが……警戒をしている時の獣のようだ。ただ、それらしき覇気というのがまるで無い、牙を剥くような気配は見受けられない。あのマントの下に怯んだ尻尾が見えるようだ。
今日は満月では無い。新月だという訳でも無い。いや、月の無い日というのにも変調があるのかは知らないが――単純に、コンフュでも受けたのかと考えたが、ここ暫くの間にコスモスの側と交戦したという報告は無い。
宣言もせずに勝手に出て行く奴も居るし、まさにこいつがその常習犯でもあるが、そんな気配もとんと無かった。

(いや、ここの所ずっとこいつを見張っていたのには、別に、大した意味は無い)

確かにこの男は実弟が気掛かりなのか何なのかで相当好き勝手をしているが、それも他の連中の放蕩ぶりと比べれば、可愛らしいものだ。
ただ、ほら、先日ああいう具合の悪い所を目の当たりにしたからだ。あれだけの不調を見れば、その後にもそれこそ気に掛かるというもので。同じ混沌の側という、同僚意識とか、そういう仲間内への心配と言うか。
もしかすると、ケフカ辺りが何かまた悪戯をしでかしたのかも知れない。そのような子供じみた真似をするのは、クジャの方だろうか?またまた難癖を付けて、喧嘩でも吹っ掛けて――その結果のコンフュだとか。
色々と考えながら、結局、安易な結論に結び付けて。ああ。どう頑張って思い巡らしてみても、推測は推測に過ぎない。頭で考えただけで真実など分かるものか。
正直、もう面倒臭くなって、兜の中で密かに唸る。
怯んだ様子のゴルベーザ。まるで此方がこいつをそう追い詰めているかのようだ。実際、そういう事を言ってしまったりはしたが……。だが、何なのだ?

うん。何とも妙な話だ。何だか、こいつの事ばかりを考えている。
こいつが、こう気になるような事ばかりをするからだが……やはり、あれがあれだ。一度張り付いた印象というのは、どうとしても容易には拭い切れない。
あの時の、あの、ああいう事が、どうしても頭を過ぎる。だから何だ、などと言っておいて、それこそ何ではあるが、こういうでかい図体に縋り付かれて、頼られて、甘え掛けられて――あれは、ちょっと、可愛らしかった。その意外さなどに心打たれたのかも知れない。つい、此方まで盛り上がってしまった。
馬鹿らしいと言えば馬鹿らしいし、情けないと言えば情けない話である。とは言え、それなりに好い思いをして、正直な所、良い気分ではあったので――そんなものは忘れろ、無かった事にしろなどと言われて、無念だか未練だか、そんなものが湧いて出て来たのやも知れない。
だから、悩むのだろうか?このゴルベーザの、こういう変な態度などに。

……ああ、いや、もしかして、まさか。
ただただ黙るゴルベーザを見ていて、それで不意に思い付いて、考えてみたりをする間も取らずにそのまま問い掛けた。

「……何だ。まさか貴様、照れているのか……?」

いいや、それは流石に、まさかな。俯き加減の奴の兜を覗き込むようにして、それを尋ねた。
らしくも無い、そんな訳も無い、という思いから、馬鹿げた事だと揶揄をするようにして。指を差してやるような、そんな仕草の真似などをして。

「…………」

長い沈黙。更に下へ向く黒い兜。
此方の方が背丈があるので、その姿勢では目元などはもう全く見えない。
――本当に?そう、なのか。自分で言っておいて、更に繰り返した。ああ、確かに、考えてみれば、堂々としている方がおかしいというそういう話ではある。恥だと思う方が当然だ。
だが、だからと言って、そうも明らかにあからさまにされると……流石に、気まずい。
と、言うか……考えてみれば。あちらは此方をまるで見ていないという事を幸いに、ゴルベーザを凝視する。
ちゃんと、覚えがある訳だ。はっきりとだか漠然となのかどうだかは知らんが意識もあって、自覚もあって、それで、こういう。
多分、兜の下では青い顔をしているか、赤い顔をしているか――可愛いじゃないか、などと思ってしまった。

……ああ。兎も角だ。こら、俯いているな、こっちまで恥をかいたような気分になる。思い返したあれやこれが全部、やたらと恥ずかしくなる。
うう、と思わず唸って、こいつの兜を引っ掴んで無理にでも上を向かせてやろうかと考えて、そんな事をしたって事態が好転する訳でも無しと考え直して――

「――ええい、戦士たる者がいちいちまごつくな!そら、こういう時は……そう、動いて競って汗でもかけば、気も晴れるというものだ。迷う暇などがあるなら、剣を取れ!」

気付けば、そんな事を言っていた。
ああ、もう、堪え難い。互いにうじうじとしているなど気色が悪いし性に合わない、背やら腹の中やらがむずむずとする。だから、思わず吠えていた。
ゴルベーザはいつからか顔を上げていて、此方を見て――すまないが……私はそなたと対等に手合わせが出来る程には剣は使えない。律儀にそうして返して来た。
いや、剣を、というのは、所謂ただの言い回しの都合と言うか、言葉の綾というものだが。何であれ、漸く奴がこっちを見た。それで妙に満足する。
だが、ちょっと、また照れが出て来た。何でこの程度の事にこう必死なんだ、わしは。

「そなたは……面白い男だな」

ゴルベーザは笑った、ような気がする。そういう息遣い。
ああ。乱暴だと言うか大雑把だとも言えるが、そなたのそういう所は――嫌いでは、無い。
それを言う奴の声音は、軽い。何だか気が抜けて、だからなのか、尚更に気恥ずかしくなり、もう何もかもを簡素に適当に片付けたくなる。
ゴルベーザに言われて、反射的に即座に返した。

「嫌では無い、などと回りくどい言い方をするな――そもそもだ、己の事くらいきちんと己で受け止めろ、己から逃げるな。嫌なら嫌で好きなら好きで嫌いなら嫌いだと、はっきりと言え!」
「……」
「……」
「……」

――あ。いや、これは。奴の兜の真ん前に指を突き付けて、そこでやっと、わしはしょうきにもどった。勢い任せに、変な事を口走ってしまった。
ゴルベーザの目の焦点は、真っ直ぐにわしの方にある。奴の、驚いた、というような、考え込むような、そんな仕草。
……ああ。どうでも良いのならば、そうだな、気にもしない筈だ。そんな奴の声。

「……その言い方で言うならば、私はそなたを……好き、なのだろうか」
「……」
「すまない。曖昧に濁すな、と言われたばかりなのにな。だが……ああ。はっきりと、とは……難しいものだな」
「い、いや……まぁ、うむ」

それから先は何を言うべきなのか、分からない。という、そういう――お互いに。
はっきりしろ、とは、今のこの場合、何をはっきりとさせれば良いのだろうか……などと悩んで。


「――何をしているのだ。鎧が二人で並んでいると、狭い」


後にやって来た皇帝にそう尊大に文句を言われるまで、二人で見合って、そのままだった。




<続>
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