2017-01-01 22:39

■ガーゴル?012より以前

■ガーゴル?012より以前。二人の物語は多分これからだ。

淡々と事をこなし、ただ戦う。
魔人ゴルベーザ。他の戦士達と同様に、カオスが選び、こちらの側に呼び出されたものだ。それに相応しい戦士ではある、実力的には。
そう、能力などは申し分無い。容赦も躊躇も無く敵を打ち砕くそのやり方に、特に問題も無い。物怖じをしない度胸もある。

(だが、それだけだ)

ガーランドは思う。
そうなるだけの絶望をしたのか、希望を持てずにただ堕ちたのか――他の連中との、決定的な差。ゴルベーザは、己の為に力を奮う事をしない。
己の神の為にこそ戦うというのは皆そうだが、ゴルベーザは本当に、それだけだった。身を守るつもりが頭に無いかのように、自身を顧みる事無く、そこでそのまま死んでしまってもいい、という戦い方をする。

(だから躊躇や物怖じが無い――そんなもの、勇気では無い。ただ捨て鉢なだけだ)

自己犠牲というだけを抜き出してみれば、ある種コスモスの側の者達の性質に近いが、それともまた違っている。コスモスの連中には――ガーランドなどからすれば「くだらない」「取るに足らない」ものではあるが――信念がある。彼らは各々の正義を信じて、恐れずにただ戦っているのだ。
ゴルベーザにはそういう信条など窺えない、言いなりであるだけだ。こちらの側の軍師を気取る皇帝が指して示して来る事に、逆らったという所を見た事が無い。
そうした皇帝の下働きのような事にさえ従うのは、自尊心が無いからか。それでも戦士か。折角の能力を、勿体無い。興醒めだ。白けてしまう。
だからガーランドは思うのだ。ゴルベーザというのは、ただのそんな男だと。


「つまらない男だ」

どこぞを指差して、皇帝は言う。

「そういう、何に逆らう事もしない奴も中には居る、とは分かるが……ただただ、ひとの指図に従うだけで、本当につまらない生き方だ。それで何が楽しいのやら」
「そう他人を言いなりにさせる側の奴が、何を言うか」

ゴルベーザを嘲笑って肩を竦める皇帝に、ガーランドは苦笑をした。

「だからこそ、そちらの側の連中の頭の中というのが私にはとんと、理解出来んのだ」
「だが、実力は申し分無い」

――ほう?皇帝は目を見張る。軽く笑って、猛者の兜などを見て。

「相変わらずの戦馬鹿だな。あれの強さを、気に入ったか。惹かれたか?」
「……だからこそ、だ。それだけの実力を己の為にはせず、故に、己を誇るという事もしない。そんな奴は戦士では無い、それこそつまらない、ただの腑抜けだ」
「ここには居ない誰かの悪口を言っているというのも、格好のいい事では無いがな?」
「またそれを、貴様が言うか」

金色が、くつくつと笑う。嫌らしい態度だ。
皇帝の話の中には、大抵において何らかの企みがある。と思うのは気のせいで、実は今のそれは本当にただの何気無い戯言なのかも知れない。
皇帝という男の普段のやりようとか雰囲気というものが、こういうただの会話などをいちいち疑わせる。そんな顔色の読み合いを楽しんでいる節もある。
――ああ、面倒臭い。こういう会話は、兎に角ただ面倒臭いだけだ。
話術というのがあるとは分かる。が、ガーランドはこんな駆け引きは好かない。戦場でのやり取りとしての事はまた別だが、座して語り合う時くらいは適当に大雑把に過ごしたい。戦う時にこそ全力を出せるように、だ。

後々に、そういう事を考えている時に、出くわした。
ガーランドはゴルベーザを見付けて、声を掛けた。
ゴルベーザ。ああ、どうした、こんな所で何をしている?――別段、ゴルベーザの行動が気になったとかも無かったが、口を開けた勢いでそう続けて。
だがゴルベーザはガーランドを無視して、がちゃがちゃと鎧を軋ませて歩いて行った。

「……おい」

一度、目が合ったのだ。気付かなかった、という訳は無い。
ガーランドはゴルベーザの後を追い、こちらを見ろとばかりに大袈裟な動作で足音を立てて近付いた。
話があるという事も無いが、このままでは何か悔しい。だから、また呼び掛ける。

「ゴルベーザ!貴様、話すら聞かんというのか」
「……」

こら、待て。そうして追い掛けて追い付いて、漸くゴルベーザはガーランドへと振り返る。
兜から覗く単眼が、じっと猛者を睨み付けた。何だ。と、尋ね掛けるように。

「貴様……わしを無視して行くな」

随分と横柄な態度である。気に障る事でもあったのか、もしや己がそれをしたのか?ガーランドはそんな事を見て探り、この硬い鎧とただの眼光一つからはとても窺い知れないと、思考を放り出した。

「……」
「何だ。無視をするな、と言っているのだ」

単純に尋ね掛けて、魔人に問う。なじるような意図も添えて。
――。ゴルベーザが舌打ちをした、ように聴こえたのは気のせいだろうか。

「そなたは偶然、ここに通り掛かったというだけに見える。特別に用件は無いのなら、私が付き合う義理は無い」

やっと答えたかと思えば、ゴルベーザは言う。要は、邪魔だとか失せろとかそんな事を。

「……随分な言い草だな」

ガーランドは驚いて、やや怯み、苦笑いをする。

「貴様に、そんな度胸があるとは思わなんだ」
「何だと?」

冷やかすように言えば、流石にこのゴルベーザも食い付いて来た。

「皇帝の奴の言う事には、いつも従順であるのに」
「ああ。あの男は、あんな奴だからな。下手に口応えをした方が、余程に面倒だ」

そして、当たり前の事だとばかりに、しれっと答える。

「だから、そういう風に付き合ってやっているだけだ。妥協をしてやるくらい、安いものだ」

ああ。きっぱりとゴルベーザは言い切る。演技だ。あんなものに本気で従う訳が無い。それで満足だというのなら、どうとでも付き合ってやるがな。馬鹿らしいが。

「そなたは、あの皇帝よりかは全然ましなものだと思っている。そういうそなたなら、神々の闘争に関わる以外の事を無理強いしたりはしないだろう?――だったら、話し相手が欲しいのならば私に声を掛けるよりも壁とでも話していてくれ」

――な……。ガーランドは呆気に取られる。一応、自分は褒められているのだろうか?いや、しかし。
ゴルベーザは堂々と答えて、対して思わぬ毒舌に唸るばかりのガーランドを置いてさっさと場を後にした。

気にも留めない。意外に、とか、そんなものでは無い。腑抜けだなどと、とんでもない。捨て鉢であるのは、自身についてだけでは無くて、他の全部に対してもか。
ガーランドはただ唸る。勝手な印象を持っていたとは認めよう。会って話をしてみてやっと分かる、という事もある。けれど、これは、ああ何と言うか。
言い方は苛烈であるのに冷たい態度。『毒虫』の名を持つ男は、その通り、本当の猛毒だった。

「……皇帝の奴は面倒臭い、というのには同意をするが……いやまさか、つまり、わしの方はそうでも無いとか、どうでもいいと、わしはなめられてるという事か……?」

ぽつんと独り置いて行かれた、そんな気分になって(実際、まさにその通りで)。ガーランドはつい、口に出して呟いていた。






『どうでもいい』からこそのゴルベーザのその適当さが、ガーランドとは意外に馬が合ったとか、そして魔人の自暴自棄な所や猛者の盲進をするばかりの部分を揶揄したり諭したりをし合うような仲になったとか、そんな後日談はまたそれはそれとして。




<終>
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