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2017-01-01 22:58

■ゴルセシ

■ゴルセシ。踏み越えてるけど一歩手前。
騎士は魔人と対峙して、立ち塞がり、立ち向かい、対して戦う。
互いに力を尽くして、力は尽き果て、それでも無理に踏み止まっては踏み込む事を、ああ酷く滑稽だ、と考えた――殺してやろう、とか、倒すという事を目的としている、とか、そういう意思が全く無いのだ、実を言えば。それで決着など着く筈も無い。ああ、滑稽だ。なんて滑稽な。
魔法の余波を受け、ごう、と大きく音を立てて崩れた岩壁を、揃って避けた。
砕けた岩盤を足下にして、舞い上がる砂塵を境にして、顔を合わせて。戦いと、互いの間にこうして区切りが出来た。

「……」
「……」

ああ、うむ、うん――だから興が冷めたとか邪魔が入ったとか、それらしい事を言って二人は再戦を避けた。



共にへたり込むようにして、そこの瓦礫を椅子代わりにする。
疲れた。気が抜けてしまった。攻撃の手を止めた事で緊張が抜けてすっかり脱力をして、そんな緩みを取り繕うという気も失せた。
魔力の波を受けてばたばたと強くはためいていた外套などは、ふうっと吹き抜ける渓谷の風に煽られて今はただひらひらと揺らめくだけで。

「……」
「……」

やり合い、ぶつかり合ったその反動、だろうか。単純な消耗だけで無く、もう何をしようという気にもなれず、二人でただただ向き合う、妙に呑気な空気。
ああ。何とも言えない思いをして、しかし疲労にかまけてそのまま見合う。そうして、互いに考えた。
兄、或いは弟と、戦う形だけをやってみせて、それで自分は結局、何をしたいのだろうか?何をしているのだろうか?何を、成せるのだろうか?
そう、本当に、倒してやるという気が実は無いのだ、何でそんな事をしなくてはいけないのだ?とさえ思う。それが本音だ。
疲れてしまって、いつもの自分を支えていられない。汗と流れて、建前は剥がれ落ちた。頭の中でくらい白状をしたって良いじゃないか、なんて、歯止めが外れたかのように想いが加速する――

ああ、実は、手を引いてやりたいのだ、ただ手を繋ぎたい。引っ掴んででも、引っ張ってでも、そうしてやりたい、そうしたい。けれどそうは出来ない。けれど、だけれど。だから、自分は『ふり』だけをして、取り繕って味方をも欺いて。ああ。

黒い魔人。白銀の騎士。二人で、どれくらいそうぼんやりと並んでいたのだろうか?ふと気付き、はっとして、深く見詰め合っていたのだという事にも気が付いて。また、はっとなる。何だか妙に驚いてしまった。固い仕草で、何でも無いというようにして目線を外す。
我ながら、と互いで思う。さっきまでは特に意識もしていなかったのに、急に明らかにぎくしゃくとしていて、気まずい。
沈黙。静寂。風の音。常夜の空気。

「…………何故、此処に残っている?」
「!」

不意に、ゴルベーザがセシルに声を掛けた。

「えっ……?」
「ああ。もう、やり合う気などは無い。背を狙うような事はしない。だから、帰ればいいだろう」

……お前には、仲間が居るのだろう。帰るべき場所というのがある。
正直、相当に疲れていて、己の言葉にどれだけの説得力があるかとも考えず、ゴルベーザはそう言った。
敵に、帰還を促す。背信めいた言動だが、戦い続けるには厳しいくらいに消耗をしていた、という理由がある。敢えて逃がしてやったのだ、などと言い張るのでもいい。ああ。ゴルベーザは他の連中への言い訳を探して、それこそどっと疲れて来た。
――兄さん。セシルがゴルベーザを見上げて来る。

「まるで、兄さんには居ないみたいな言い方」
「何がだ」
「仲間のこと」

一瞬、何を言うのか?と、考えて。ゴルベーザは自分の仲間というのを思い浮かべて。

「……」

いや、あれらを仲間だと呼んで良いものか。カオスの側の、自分の他の戦士達。あの連中。立場上は、確かにそうと言えるのだが、だが、ああ、しかし。
悩み始めた兄を見詰めて、セシルが言う――兄さん、もしかして、友達居ないの……?深刻そうな声音で。

「……何だ、その目は」
「だって……可哀想」

……。何だその目は、その言い草は。

「私の事はいい。お前には、帰るべき所があるのだ、そこでの役目というのがあるだろう。馬鹿を言っている暇があったら、とっとと帰れ」

『敵』を相手に、何を言っているのか。同じ色の瞳を睨み、ゴルベーザは投げやりに手を振る。
セシルは、笑顔だった。

「何が可笑しい」
「あっ……うん。ごめん。兄さんとこうして普通に喋ってる、って思ったら何だか……何だろう。多分、うん、嬉しいんだ」

にこにこと笑うセシル。
ゴルベーザは半ば面食らう。ころころと表情の変わる奴だ――ついさっきまで、それなりに力を込めてやり合っていたというのに。現に、今ふたりが腰掛けているのは決闘の末の瓦礫だ。破壊の跡だ。

「……嬉しいな」
「……」

睨み合い、空を切って互いへ攻撃をした。繰り広げた斬撃や魔法の波動、それらの威力。そういう事が、もうずっと遠くのものだと思えた。
今はただ座っている。二人で向かい合うようにして、ゴルベーザは身構えもせず、セシルは笑顔で。ただ、辺りは静かで。二人の他には、誰も居ない。
ああ。もう歯止めは利かない。

「――私には友は居ない、仲間と呼ぶべき者も居ない、か。そうかも知れないな」

そうだな、私は独りだ……。ゴルベーザも笑う。
ゴルベーザは兜のままで、だからセシルには表情など見えない。声音だけを察して、セシルは小さく首を傾げる。

「では、ちょうどいい、そこの間抜けな騎士を捕まえて術を掛けて、傀儡なりにしてしまおうか」

そういうセシルを、手套の手が指した。ゴルベーザはセシルを見る。似ていないような、似ているような、弟の顔。長い睫毛。同じ色合いの瞳、青い紅を塗り付けた唇。
戦いの中でのセシルは、ああも力強くて猛々しいのに。ゴルベーザは今こうして彼を前にして、その双眸や姿を見て、思う――ああ、「綺麗だ」と。
風に巻き上がる騎士の腰帯、背にしたマントと、長い銀髪。ゴルベーザは差し出した手でセシルを捕まえた。そうして腰を抱き寄せる。セシルは、逃げない。

「そういうのは、やっぱり仲間だとは言えないと思う……」
「そう言えばそうだな」
「兄さんも、意外と考え無しに喋るんだね」
「私の言う事にはいちいち全部意味や意図があると、そんな風に思っていたのか?それは流石に持ち上げ過ぎだが、一応、今も意味を込めて話をしているつもりだ」

ゴルベーザの低い声。意味?どんな?とは、セシルの問い掛け。
ゴルベーザは言葉では答えずにセシルの手を取る。指に指を通して、握り締めた。

「兄さん」

ああ、違うよ……戸惑う声。何が違う?そんなセシルへ、今度はゴルベーザが問い返した。
ゴルベーザはいつもの兜をしている。そうでなければ、とっくに――と、そう思ってしまう。キスを待つ、そういう距離だ。

「仲間だとかそうでは無いとか、それより前に、僕達は兄弟だよ」
「そうだな」
「そうだよ」
「ああ、そうだな」
「そうだよ。僕達にはもう、絆があるんだ……」

そこから俯いて顔を逸らした、セシルのその頬は赤く色付いて。

「――だから、だからこそ、僕は兄さんと仲間としても一緒に居たい。これは僕自身の意思で、僕の気持ちで、我が儘で……僕の、願いだ」

術なんか、跳ね除けてやる。僕の意思で、兄さんと居たい。それだけで僕は十分だ、十分嬉しい。それ以上とか、それ以外なんて。そう言うセシル。
言いながらも、目線は合わせられない。顔が熱い。

「セシル」

手套の革の感触が、不意に離れた。セシルの視界を過ぎた軌跡。はっと顔を振り上げた先に、銀色が見えた。
魔人の兜が地面に落ちる。次にはセシルの首に手が掛かり、近付いた顔、褐色のその肌、長い銀糸。同じ色の瞳。ゴルベーザの、素顔。

「セシル、私は善人などでは無い。操ってでも、というのは私の本音だ。私だって我が儘を言いたくなる……お前が、ここにこうして居るからだ」

兜越しでは無い、はっきりとした兄の声。
それからセシルの額に触れたのは、柔らかくて温かな。

「……」

ああ。ただ一つ触れただけで、背が震えた。鼓動が跳ね上がる。セシルの髪を掻き混ぜる手の感触――兄の、大きな手。
お前はずるい。卑怯だ、騎士のくせに。ゴルベーザが言う。らしくは無い、また投げやりな言い方。同じ色合いの目を睨む目。

「……どうしてお前は…………」

彼の瞳、そこに映り込む自分。ああ。ゴルベーザは言葉尻を濁した。
喚く鼓動が耳を塞いで、視野までも狭くして。疲労が頭を鈍らせているのかも知れない。彼へと釘付けになる、目を離せないのだ。息継ぎが上手く出来ていない、苦しくなって、呼吸を荒げた。
兄さん……セシル。その声、ただ短い言葉が意識を逸らせる。それこそ術でも掛けられたように、惹き付けられてしまう。ああ、これは魔術なんかでは無い、言い訳なんてやめてしまおう、これは、この想いは……。
目前に見る互いの表情、瞬き、唇の動き――兄さん。セシルは身を凭れて寄り添い、兄のその唇に唇を重ねた。

「……」

そうして触れたという事とその柔らかさ、そういう実感が互いの想いに火を点す。震え上がるような感覚。酷く甘い悪寒だ。
ああ。少し、笑ってしまった。お互いに、顔が真っ赤だった。ふと触れた耳朶まで熱い。
セシルは兄の首に腕を回して、ゴルベーザはセシルの腰や頭を抱いて。触れ合う愛おしさを、抱き締める。
花を思わせる、弟の笑顔。兄の大きな身体。互いをただじっと見詰めて、飽く事無くそのままで居た。







「セシル」
「え……?」
「もう一度、許してくれるか」
「何を?」
「口付けを」
「……」
「嫌か?」

ううん……。ゴルベーザの膝の上から顔を見上げて、セシルは首を左右にした。

「ただちょっと、驚いただけ」
「私もだ」
「え?」

――ああ、知らなかった。ゴルベーザは続けた。自分に、こんな、人間らしい感情なんてものがまだあるとは。

「兄さん」
「……お前が居るから私は、人で居られる。お前が居てくれたから、私は人間で居られたのだな……」
「兄さんはただの人だよ、そうでないなら僕も人間じゃないって事になる。だって、僕達は兄弟だもの」
「お前はちゃんとした人間だ」
「兄さんの弟だよ」
「……ああ悪かった。もう、そういう事は言わない」

ふふ。セシルの笑顔。ゴルベーザも、笑った。
小手や手套、甲冑の一部も簡単に脱いでしまっていた。それらを身に着けて向かい合うという事が、今は酷く無粋なものに思えたのだ。
セシルの髪を撫で、頬へ触れたゴルベーザの手は、酷く冷めている。ああ、魔力を使い果たしたからだと彼は言った。魔法とは、心の力だ。だから、まぁ、気疲れとでも言うのか、消耗しているのだ、と。

「大丈夫……?」
「ああ……しかし、お前を抱いてやる事くらいは出来る」
「……っ兄さん……!!」

ゴルベーザが抱き寄せたセシルの肌身は、温かかった。
鎧から覗く手足、剥き出しの箇所にふと触れて、それだけゴルベーザの身体が冷えているという事なのだろうが、熱いくらいだと感じる。

「何だ、大声を出して?……そういう意味では無い、馬鹿者が」
「だ、だって……っ!」

もがくセシルを、ゴルベーザは更に腕の中へと引き入れる。
ああ本当に熱い、のぼせているのか?と笑った兄に、セシルは唸り――その厚い胸に、身体を張り付けた。

「……温めて、あげようか」
「何?」
「あ……ああっ、いや、そんな、変な意味じゃないよ!?こう、ずっとくっついていたらもっと温まるかな、って……それだけで、全然そういう意味じゃないから!……」

セシル。笑みを乗せた囁きが、セシルの耳をくすぐる。触れ合わせた掌の、少し汗染みた感触――……兄さん。重ねられた唇、深い口付けの溶け合うような心地。より先の艶事を予感させる、その水気。

「……可愛らしい事を言ってくれるな。そんな、また真っ赤な顔をして」

ゴルベーザは、セシルを胸に抱き締める。
馬鹿だと思ってない?思わんさ。……僕、邪魔じゃない?ああ。兄さん、もしかして……寝ちゃった?いや。そんな問答。それ以外には風が吹き抜けて行くだけの、まどろむような雰囲気。
だが、身体も疲れていたが、どうしても寝付けそうには無い。どきどきと跳ねる鼓動が、甘く、くすぐったく思える。それは嫌なものでは無くて、寧ろとても心地好い感じがした。

他の事や、先の事を考えもしたが、それよりも今を想う。
今は、疲れているのだ、手にあるものを掻き込むような事もしたくはないが、外れたままの建前などを拾うのも後回しにしよう――生温い、多分とても滑稽な、そんなこれもまた一興とか、大事にしたいのだとかそれらしい事を頭で考えて、そうしてゴルベーザとセシルは二人でただ緩やかに手を繋いで居た。




<終>
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